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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第5章 番頭さんに珈琲を



「そのまんまだよ。一瞬での凍結と一瞬での解凍。
 いかに体組織を強化しようとベースがタンパク質である以上、人の細胞組織はその急激な変化に耐えられない。
 この状態でさらに『凍結』と『解凍』をしたらどうなると思う?」

 悪ければ即死。良くて生きながら自分の身体が腐っていくのを、観察するハメになる。

 毎度ながら、『こっち』のスティーブンさんは実にえげつない。

「くそ……くそぉ……!」

 敗北を認めた『敵』は、四肢を凍らせたまま、すすり泣き始めた。
 私は見るに堪えないと思う。だがそれは、哀れみからではない。
 彼は――数日前までライブラのメンバーで私の顔見知りだったのだ。

「連れて行け」

 スティーブンさんが言う。だが命じたのは私にではない。
 私の背後からぞろっと、闇の空気をまとったデカい人たちが現れる。
 彼らは私を丁重に避け哀れな『敵』に近づく。

「ひ……っ……、寄せ、近づくな……!」

 私は背を向ける。その肩に大きな手が置かれた。

「お疲れ、ハルカ。君は先に地上に上がっていていいよ」

 いつでも優しいスティーブンさんであった。

 …………

 …………


 外では朝日が昇っていた。
 私はガレキに座り、うなだれる。
 そんな私の前に、片膝ついて控える青年がいる。

「……何で私、気がついたら『こっち』側にいるんすかね」

「心中、お察しいたします」
 切れ長の目の黒衣の青年は、真摯に答える。

「何で私ら、普通に会って作戦行動取って、たまに一緒に飲みに行く仲になってんすか……」
 両手を顔に当て、うなだれる。
「数奇な縁と愚考いたします」

「しかも昨日、本当ならオフですよ? 何だって一日中、裏切り者を追ってタダ働きして夜明けの光を浴びなきゃいけないんですか……」
「この後のことは我らにお任せを」


 ちなみに『表』でも相変わらず働かされる。
 頑張った分だけ愛してはもらえるけど。

「結局振り回されっぱなしだし……」
「心中、お察しいたします」


 ……こいつ適当に返答してるだけだろ絶対。


「ハルカ!!」

 私を呼ぶ声がする。だから今日も立ち上がる。


 というわけで今日も私はスティーブンさんの隣に立ち、元気なのであった。





『番頭さんに珈琲を』

 ――(多分)HAPPY END!!!

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