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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



「は? え?」

 呆けた声を出し、何度も隣を見る。
 だが何度見ても、疲れ切った顔のスティーブンさんが、間違いなく私の隣で寝ていた。
 春の日だまりの中で、まどろんでいるかのように。
 私はしばらく、しばらく考えて。

「………………寝よ」

 やっと寝てくれたのに起こすのも悪い。
 てかスティーブンさんの態度に、一喜一憂してる自分がバカみたいだ。
 氷のうを取り、氷枕を普通の枕に替え、スティーブンさんの肩まで布団をかけてあげた。
 そして寄り添うようにして目を閉じる。

「…………」

 何か、寝づらい。間近の顔を見てしまう。

 やっぱりカッコいいなあ。

 首筋のタトゥーがよく見え、ドキドキする。
 無精ひげ、目元の傷、青シャツ。

 触りたい触りたい触りたい……けどガマン!!

 相手が寝てる隙に勝手に触れるのは良くない。

 ちょうど広いベッドなので、私はそっとそっとスティーブンさんから距離を取り――。

「うおっ!!」
 ガバッと抱き寄せられた。

「スティーブンさん!……あの、ちょっと……!?」

「……寒い……」

「は?」
 後は、ぐーといういびきが聞こえるのみ。

 ……もしや暖を求めて私を抱き寄せただけ?

 ガクーッと力が抜ける。

「何だか私、振り回されてますね、あなたに」

 腹いせに目元の傷をちょんとつつくが、敵に動きは無し。
 もっと触れたかったけど、今度こそセクハラになってしまう。
 なので青シャツにちょっとだけ触れ、上質の生地の触り心地を楽しんだ。

 相手がぐっすり寝てるので顔を近づけ、

「ねえスティーブンさん。ホントに、あなたを尊敬してるんですよ?」

 ふふっと笑い、目を閉じた。
 暖かい。熱も下がってきた気がする。


 私はスティーブンさんに抱きしめられ、安心してぐっすり眠ってしまった。


 …………

 …………

 誰かが部屋に入ってくる音がした。

「いるかね? スティーブン。玄関で応答が無かったので、勝手ながら入らせてもらった。
 先の打ち合わせの資料と、ミス・ハルカの見舞いに――。
 ……!? し、失礼したっ! 君のプライベートに勝手に立ち入ってすまない!
 連絡は後ほど、改めてさせていただく!!」

 誰かが慌ただしく走り去って行く音。

 何だろうと思いつつ、私は眠りの園に戻っていった。

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