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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



「疲れてるんですよ、スティーブンさん!!」

 そう。スティーブンさんは今、死ぬほど疲れてるだけだったのだ。

 何せ五徹の後、一晩寝ただけで、翌日また深夜まで仕事。

 そののち明け方近くまで私の看病。
 その後に数時間寝ただけで、昼に打ち合わせ外出。

 ……スティーブンさん、まともに休んでねえ!!

 HP全快のスティーブンさんを、多分私はまだ見てない。
 私が追い詰めたのか、本人が疲労の自覚がないくらい疲労していたのか。
 どっちにしろ休ませないとヤバい!!

 私に言われ、スティーブンさんも我に返ったみたいだった。
 
「……すまない。僕も少しムキになってたみたいだ。
 僕の友人だから君も信用してくれたっていうのに。
 年上なのに、何だかみっともない姿を見せちゃったね」
 多少は自覚があったのか、ちょっと謝ってきた。

「い、いえ。私こそお世話になってるのに、生意気な態度ばっかり取っちゃって」

 うう。しゃべりまくって、熱が上がったかなあ。
 だがあと少しだ!

「そんなことはないよ。本当にごめん。君を困らせた」

「いいですいいです。いいからスティーブンさん、寝て下さい。
 ベッドでぐっすり寝たら不調もきっと治りますから」
「うん、そうだね。ハルカ」

 スティーブンさんはやっと笑ってくれた。
 どうやら、ちゃんと起きてくれたらしい。私もホッとする。
 そしてあくびをし、大きく伸びをする。

「君の近くにいると、僕は眠気を誘われるみたいなんだ。
 寝るまいとするのが、正直辛かったよ」

「私、『春』ですからね」

 常春(とこはる)の病。常春の呪い。
 春眠暁を覚えず。あったかいと人は眠くなる。

「そうみたいだ。クラウスにも体調を心配されてたし、今度こそちゃんと寝るとしよう」

 またクラウスさんかよ。
 何か私の方が、クラウスさんとやらに嫉妬しそうになってきた。
 
 でもやっと、スティーブンさんがおやすみモードに入ったっぽい。
 私は枕に頭をのっけ、
「それじゃ、おやすみなさい、スティーブンさん」
 これで私もやっと眠れる~と、安堵した。

「うん。おやすみ、ハルカ」

 スティーブンさんは羽毛布団を持ち上げ、ベッドに入ると、目を閉じ、すぅっと眠りについた。

 私の隣で。


「……は?」

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