第5章 番頭さんに珈琲を
そしてソファに座り、時計の針を見ながらまったり本を読んでいると、リビングの扉が開く音がした。
ガバッと立ち上がるが早いか、
「ただいま。ハルカ!」
「お帰りなさい、スティーブンさん!」
立ち上がり、小走りに近づくとハグ。すぐに抱きしめられ、キスをされる。
……微笑ましげなヴェデッドさんが気になるんだが。
家政婦さんって、どうも慣れないなあ。
「お疲れさまです。お仕事、どうでした?」
「分かってるくせに」
コツンと頭をこづかれた。あう。
まあ今日もアレだ。アレがどうで、世界の危機がああで、ザップさんが引っかき回してクラウスさんがどうにかして、スティーブンさんは…………大変そうだった。
「君も大分、慣れてきたじゃないか」
頭なでなで。
「今日も見学と雑用だったじゃないですか」
「いや。君の呪術で、重傷に泣き叫ぶ連中を寝かせてくれた。それに低体温に陥った子どもたちを温めてくれた。あれだけでもすごく助かるよ」
……そうなんだよなー。役に立てて嬉しいけど、戦場に出る機会が増えてる気がしないでもない。
「お二人とも、食事の準備が出来ましたよ」
「はーい」
リビングからヴェデッドさんに呼ばれ、返事をする。スティーブンさんが、
「何だ、また僕を待ってたのか。先に食べていいって、いつも言ってるだろう?」
「い、いや、一緒の時間にした方がヴェデッドさんも楽かなあって」
「いや変わらないだろう」
……ですよね。
「でも嬉しいよ。行こうか」
手をつながれ、一緒にリビングに行く。何だか照れくさく、そして嬉しかった。
ずっと一緒にいる。それが当たり前になっていることが、すごく嬉しい。
…………
…………
そしてヴェデッドさんが帰り、あとは二人の甘い時間♡
……と思うでしょ?
寝室から悲痛な泣き声が響く。
「ううううちに帰ってからもお仕事を持ち込まなくたって、いいじゃないですかあ!!」
アメリカンな人々は、オンとオフを完璧に分けるんじゃなかったのか!?
だが鬼教官は容赦ない。
「PCくらい、使いこなしなさい。
一応、君は推薦でうちに来たってことになってるんだ。
今はごまかしてるけど、ちゃんと出来ないとおかしいだろう?」
それもこれも、スティーブンさんが変な設定作るから~。