第5章 番頭さんに珈琲を
「冗談っす冗談っす。あー、働くの楽しみー♪」
「そうだな。初出勤の日程も決まった。君のスーツを買っておいたから、後で試着してみよう」
私もスティーブンさんのココとかアソコとか洗いながら、
「とか何とか言って、スーツ着せて変なプレイをさせないで下さいね」
あははーと笑うと。
「なるほど」
……ヤバい。変な入れ知恵をしてしまった。
スティーブンさんの目の色が変わったっ!!
冗談じゃない! 変なプレイをしたスーツで出勤なんぞ出来るか!!
「は、早く上がりましょうよ、スティーブンさんんんんっ!!」
しかし敵の明晰な頭脳は、すでに新たな分野の開拓に乗り出していた……。
そして後日。
「教皇庁より推薦をいただきまして、本日よりライブラに勤務となりました。初級呪術師のハルカと申します。よろしくお願いします!!」
羞恥プレイの心地で、私はライブラの新メンバーとして頭を下げたのだった。
なおスティーブンさんは宣言通りに『私とは今日初めて会いました』という完璧なポーカーフェイス。
ザップさんとレオナルドさんは、私の経歴が真っ赤な嘘と知っているので笑いをこらえている。ツェッドさんは微妙なお顔。
クラウスさんとギルベルトさんは微笑んでいる。
初めて顔を合わせるチェインさんのみが『よろしくね』と握手してくれた。
……て、この部屋にいるの、ほとんど知り合いやんけ!!
緊張と胃痛で過ごした日々を返せっ!!
そういうわけで、私の新しい日々が始まったのだった。
…………
…………
さて長々と話したけど、私の物語もそろそろ終わりにしようと思う。
新しい日々は実に目まぐるしく過ぎていくものだ。
「ただいま~」
今日も重いスーツケースを持ち、スティーブンさん宅の扉を開ける。すると、
「お帰りなさいませ、奥様」
ハウスキーパーのミセス・ヴェデッドがニコニコしている。
私は促されるままカバンを持って頂き、
「ヴェデッドさん、何度も言ってるけど奥様って止めて下さいよ。結婚していないし」
「あらあらそうですか? でも旦那様はいずれそうなると」
知らんわ。初耳だわ。プロポーズのプの字も聞いてませんがなっ!!