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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第5章 番頭さんに珈琲を



 ふぁ~とあくびをしつつ、スティーブンさんにもたれた。
 幸せ。幸せすぎる。だが……。

「それはそれとして、私はいつこの監禁生活から解放されるのでしょうか」
「人聞きの悪いことを言うんじゃ無い。安全が確保されたら、いつでも出してあげるから」
 スティーブンさんも小さくあくびをし、私を抱き寄せながら、そろそろおやすみっぽい。

「もう大分、呪いの制御は出来てきていると思うのですが」
「おやすみ、ハルカ」

 パチンとベッドサイドのランプが消される。

 流された……!!

 屈辱に身を震わせるが、スティーブンさんの快い寝息が聞こえただけだった。

 ま、まあいいか。明日だ。明日になればきっと!!

 身体を寄せ、目を閉じる。

 …………


 そして、外に出られないまま数週間が過ぎた。


 繰り返そう。数週間が過ぎた。


 …………


「愛しているよ、ハルカ」
「私もです。お名残惜しいです、スティーブンさん」

 玄関前で抱きしめ合ってキスをする。
 いつも長いが今日も長い。もちろん嬉しいことは嬉しいが、さながら今生の別れのごとく長いハグ&キスにはいい加減に不安を覚える。

 朝なんだからトーストくわえて走って出かけりゃいいのに、スティーブンさんは時間管理が完璧。
 余裕をもって出勤出来るのである。

 それはそれとして。
 
「……スティーブンさん、前から言いたかったんですが」
「何だい?」
 飽きもせず私をハグしつつ、優しく聞いてくる。

「もう少しかがんでいただけます?」

 ち、チビじゃないからね!? スティーブンさんがデカいからいけないのだ!
 その割にあまりかがんでくれないから、いつもこっちがつま先立ちになり、ギリギリの姿勢を強いられるのだ。

「それはイヤだな」
「何でですか! 腰曲げると痛いんですか! お年寄りですか!……いだだだだだっ!!」

 スイートなキスから一転しての頭グリグリに悲鳴を上げる。

「気に入らないことがあると制裁を科すなんて最低です……」

 ハンカチを噛んでヨヨヨと泣き崩れると、ふわっと抱き上げられた。

「スティーブンさん……」
「ハルカ……」

 目が合ったかと思うと、キス。目をしぱしぱさせているとスティーブンさんが、

「ごめん」

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