第5章 番頭さんに珈琲を
「大丈夫、ちゃんと運動をすればいいから」
対策を立てられているっ!!
とはいえ、中途半端に起こされ眠いので、出来れば二度寝を決め込みたい。
「ハルカ。ハルカ」
うっさい!! というか今まで遅くなったときは寝かしてくれたのに、何で急に私を起こそうとするの!
「ハルカ、起きてくれないのかい? 僕が帰ってきたのに。君の恋人を癒やしてくれないか?」
つつくな、つつくな。疲れたならチョコレート食って血糖値を上げといて下さいよ!
もうこうなったら意地だから! パンツ下ろされようが胸揉まれようが起きないからな!!
「ハルカ~」
なおもペチペチとスティーブンさんは私の頬を叩く。
だけど私は寝たフリ。
さあ次はどうでる!? どんなエロい嫌がらせをするつもりだ!?
私はワクワクと――ゴッホン!! スティーブンさんの次の手を待った。
するとスティーブンさんは起き上がった。
な……!? まさか『大人の対応』カード!?
眠っている恋人を優しく寝かせてあげるというのか!?
ううう。敵ながらあっぱれ! そこまで私を想って下さっているとは!
と、私が一人、アホな思考に悶えていると。
「ああ……クラウス、夜分にすまない。ちょっといいかい?
いや、仕事の話じゃないんだが、個人的な相談が出来るのは君くらいしかいなくて」
……は?
慌てて薄目を開けると、スティーブンさんは暗い顔で電話をかけていた。
「ハルカが冷たいんだ。朝、厳しく言い過ぎたためかもしれない。
でも今朝だってキスをしてくれたし昼には可愛い写真を三枚も送ってくれた。僕らの間には確固たる愛情が存在すると思っている。
クラウス、君の意見はどうだろう――」
私はそっとスティーブンさんの手からスマホをもぎとる。
「すみません、クラウスさん。スティーブンさん、疲労が極地に達して錯乱状態にあるようです。
……いえ救急車は不要です。私がしっかりケアをしますので――ええ、明日またご連絡いたします。おやすみなさい」
すっと通話を切る。
「……やっぱり起きてるじゃないか」
何やらジト目で、スネた感じで言われた。
何なの、この朝との落差。
つか、無自覚にクラウスさんにノロケてますよね、スティーブンさん!!