第5章 番頭さんに珈琲を
夜。私はボディソープの香りをまとわせつつベッドに倒れ込んだ。
「はあ~」
つ、疲れた……。
私の問題が片付きスティーブンさんともラブラブになって、そろそろENDロールが流れて良さそうな状況だ。
けど、最後の最後で『制御安定化』という課題が出てきちまった。
「皆もさ~。まだ上段階があるなら、完全制御とか言わないで下さいよ~」
先生いわく『短時間だけ呪いを完全に押さえ込む』のと、『恒常的に呪いを完全に押さえ込む』のは全然別物だそうな。
私が昨日達成したのは前者。第一段階。
呪いが分離不可能な段階まで侵食した今、私は『気ぃ抜いたら周囲がバタバタ死にまくる』化学兵器状態である。
それでスティーブン邸に閉じ込められていたのでは、話がまるで進んでないことになるじゃないか。
そういうわけで、今日一日頑張って――疲れた。
「スティーブンさんも遅いみたいだし、もう寝よ……」
あくびをして目を閉じる。つか朝からスティーブンさんにおいたをされ、出勤前にはおちょくられ、昼に写真を送ったら三回くらい撮り直しさせられマジで殺意わいた。
そのくせ『スティーブンさんの写真が欲しいです♡』って言ったら、返信は『仕事中だ』とだけ。
『 お ま え が 言 う な 』という言葉が百回くらい脳裏をよぎったわっ!!
「スティーブンさん、仕事中は一個もメッセージくれないしなあ……」
ポチポチとスマホをいじりながら、寂しく呟く。
「早く、帰ってきてほしいなあ……」
ふうっと息を吐き――そのまま眠ってしまった。
……。
…………。
「ハルカ」
誰かが私の名を呼んでいる。すわ変質者か!?
「ハルカ、ハルカ。僕だ。スティーブンだ。帰ったよ」
何だ変質者か。
薄目を開けるとスティーブンさんがいた。ジャケットも脱がず、靴だけ脱いだ格好で、ベッドに乗っかってきてる。
すごく疲れた顔で、嬉しそうに私を揺すってる……重いわ!!
でも、お疲れすぎなのか、スティーブンさんともあろうものが、私が起きてるのに気づいてないようだ。
癒やしてさしあげたいのは山々だが。
「起きろよハルカ。朝のことは謝るから。一緒にチョコレートを食べよう」
寝るまえに糖分を勧めるとはダイエットの敵が!!