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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第5章 番頭さんに珈琲を



「そういうわけで、私は無事に己の試練を乗り越えたのです。
 家主もといスティーブンさんも支配下に置き、もはや人生は順風満帆。これから新しい人生を――」

「ハルカ……君、誰と会話してるんだい?」

 後ろから少々怯えた声がして、ハッと我に返る。

「私、たまにライブ電波を受信する癖がございまして……」

 恋人に――上半身裸でベッドで頬杖突く恋人に言い訳した。

 彼は剣呑な顔でそれを聞いた後、

「それより――誰が誰を支配下に置いたって?」

 ヤバい。気温急降下! 季節が冬に逆戻りっ!!

「言い間違えました。『ラブラブな関係になり』でございます」
 クールに流そうとしたってのに、

「それを! なぜ言い間違えるんだろうな!! この可愛らしい容量の脳みそはっ!!」

「ひいいっ! 脳みその容量は可愛らしくなくて結構! こめかみ止めてーっ!!」

「はは! 楽しいな。ハルカ!!」

 敵は笑顔で恋人に制裁を加えてた。けど、私の半泣き顔をじっと見た後、何か真顔になり、

「……ハルカ、朝だけど、いい?」

「……え? ちょっとスティーブンさん! どこ触って……やっ……!」


 えーと、ベッドに押し倒され――以下略でございました。
 
 …………

 ちゅんちゅんと、窓辺で小鳥さんが鳴いております。
 そのまま寝ていたかったけど、誰かに揺さぶられる。

「ハルカ。ほら、起きろ。ハルカ」
 私は夢うつつでうなる。
「ダメです……そのプレイはさすがにドン引き……」
「たいそう幸せな夢を見ているようだな、お嬢さん。頑張らせすぎたかい?」

 そして誰かが私の耳元で、吐息がかかる距離で甘くささやいた。

「ハルカ……愛しているよ」

 …………っ!!

 飛び起きた!!

 殺気! 感じたのは愛では無く殺気だった!!

『この僕にここまで言わせた以上、起きなければ相応の報いを受けてもらう』

 愛をささやく渋い声は、確かにそう脅していた!!

「スティーブンさんっ! おはようございます!!」
 するとスティーブンさんが大変に優しい顔で、

「もう11時だよ、ハルカ。どこかのヤク中のクズか君くらいのもんだ。
 こんな時間にそんな声出してるのは」

 ……あ、あの……今のセリフ、もっと気の利いた言い回しがないっすか?

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