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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第5章 番頭さんに珈琲を



「スティーブンさん……!」
 
「ハルカ。良かった……本当に良かった……」

 スティーブンさん。彼は私の方へ駆け寄ろうとした。

 うわ、今日はスーツではなく軍人が着るようなボディーアーマー姿だ。
 超レアだ! かっけー!……じゃないっ!!

「……! ち、ちょっと待って待って!!」
 そう言うとスティーブンさんは駆け寄りながら、
「? 噛まれたのか!? ならすぐ解毒剤を――」

「いえ、そうじゃないんです。今、呪いの力が暴走してるっぽいから近づくと危ないんです!!」

 触れた瞬間にスティーブンさんが死ぬとか、絶対にゴメンだ!!
 するとスティーブンさんは立ち止まり、息を吐く。
 そして私の方へ歩いてきた。

「スティーブンさん、止まって下さい! ジョークじゃないんですよ!」

「君こそ冗談を言うな。この数時間、恐怖で死ぬ思いだったんだ。
 もうこれ以上、待てない」

「いやマジですから!!」
「じゃあ制御しろ。力を開放出来たのなら制御も可能だ」
「何すかそのメチャクチャな理論!! いやホント来ないでっ!!」

 慌てて後じさるが、後ろはゾンビ氷だ。これ以上溶かしたら、ゾンビが復活するかもしれん。

「ハルカ……」
 スティーブンさんが私に手を伸ばす。
 私の中の呪いの蛇が、犠牲を求めて鎌首をもたげる。
 
 ダメダメダメダメ発動するな発動する名発動するな発動するなっ!!

 自分の中で暴れる蛇に命令する。

 動 く な ! ! 寝 て ろ ! !

 お ま え の 主 は 私 だ っ ! !

 ……。

 …………。

 誰かが私を抱きしめている。
 顔にあたる防弾ベストがちょい硬い。

「……ほら、大丈夫だって言っただろう?」

「スティーブンさん……」

「君の呪いはもう人を殺さない。君自身もだ。
 君は、自分に向けられた強烈な悪意を完全に制御することに成功したんだ」

 頭を撫でてくれる。

「マフィアやゾンビとも戦ったんだな。
 おかげで間に合ったよ。よく頑張ってくれた、ハルカ」

「………………!」

 あとはもう言葉にならなかった。

 私はスティーブンさんの胸にすがり、わんわん泣き出した。

「スティーブンさん!!」
「スターフェイズさん!!」

 遠くからレオナルドさんとザップさんが走ってくる音がした。

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