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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第5章 番頭さんに珈琲を



 ただそれは『呪いの制御』とは真逆のものだから、誰にも言わないでいただけだ。

 それ以前に実行可能なのか? やったこともないのに出来るのか?
 失敗した場合は? その場で射殺か拷問か。
 
 私の心はブルッと
怖じ気づき、危険な考えを奥底に引っ込めようとした。


 !!


 足下が大きく揺れた。

 今、上の方で大きな音がした。その振動で周囲が揺れたのだ。
 マフィアたちも一瞬、足を止めた。 
「何だ!?」
「いや、この場所にまだ気づいては――」

 今しかない。

 そう思った瞬間に私は動いていた。

 私の心の中に潜む蛇に、命ずる。『好きにしていいよ』と。

「!!」

 手錠をされたまま、後ろを振り向き、私に銃をつきつけてる奴に――直接触れた。
「――――」

 一瞬だけ訝(いぶか)しげな顔になった男は、そのまま――がくりと膝をついた。

 脳が一瞬で機能停止したのだ。ほどなく絶命する。

 男が無言で膝をついたため、残りは対応が遅れた。
「え……」

 その隙を逃さず二人目に触れる。その男も触れた瞬間に倒れ、生命の機能を停止させた。

「な、何だ!?」
「そのガキに触るな! 死ぬぞ!!」

 いかにマフィアだろうと、人間は未知の物に恐怖するように出来ている。

 相手が私に怯えた時点で、勝負はついた。

 私は三人目には全力のタックル。真横にいた四人目は、銃を構え、撃つ寸前だった。
 銃声。私の頭上を銃弾が通過する。耳がキーンとした。

「触られると死ぬぞ! 距離を取れっ!!」
「何だ、おまえ……何なんだよっ!!」

 二人は銃を構えたまま、私から数メートル距離を取った。
 撃つよりも離れることを優先した。
 その一瞬の判断が、致命的なミスになった。
 私は静かに言う。

「触れなくてもいいんですよ――もう」

 言い終えた瞬間には、二人は倒れていた。
 寒々しい地下なのに、私の周囲は春のような陽気。

「中心温度が十五℃まで下がって、生きてる人間はいません」

 私の中の呪いの蛇が、殺戮の喜びにのたうつ。

 呪いを利用し、マフィアたちの体温を急降下させ死に至らしめた。

 最深部まで侵食した『常春の呪い』の恐ろしさだ。

 わずか一分で五人を殺した。
 でも何も感じなかった。時間を無駄にした気分だった。

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