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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第5章 番頭さんに珈琲を



 変な連中につかまり、手錠をされどこかに連れて行かれている。
 遊園地に連れて行ってくれるわけじゃないことだけは、確かだろう。

 ――これからどうなる? いや、どうする?

 ここがどこかも分からない。居場所を伝える手段もない。
 どう状況がひっくり返っても、王子さまは来ない。

 でもどうすればいいんだ。どうやって逃げれば……。
 するとマフィア同士の会話が聞こえた。

「おい。何か温かくないか?」
「あのガキの呪いだ。周囲を一定温度にするらしい。まだ人体に影響はないレベルだ」
「いいのか? そんなの連れて行って」
「臓器を抜く分には問題ないだろ。早く『解体工場』に連れて行こうぜ。金が必要なんだ」

 マフィアぁーっ!! マジで臓器売買マフィアだったー!!
 あ。隣の女の子がワッと泣き出し、また殴られてる。
 かわいそうだが、私にはどうしようも出来ない。
 しかしパニックになってる人がいるせいで、逆に私は冷静になれた。

 私は周囲を確認する。マフィアの数は五人。
 そう長い距離歩くわけではないんだろう。
 でも工場とやらに連れて行かれ、ヤクでも打たれたら、私は二度と覚めない眠りに旅立つはず。
 どうすればどうすればどうすればっ!!
 全員銃を持ってるし、私と女の子は手錠をされてるし!

 助けて、スティーブンさんっ!!

 …………。

 私は唇を噛んだ。

 こんなときにまで、頼るのか。

 私はこの街で生きていくって決めた。

 なのにこの程度のピンチで怯えて何も出来ず、震えてるだけでいいの?

 考えろ。私が生き延びるためのあらゆる可能性を。

 何かあるはずだ。針の穴ほどの小さな確率でもいい。
 この五人を始末して、私が逃げるための方法がどこかに――。

 ……。

 …………。

 ……ひとつだけ、策がある。


 自分で考えたことに自分でビビリ、足下から凍るような感覚に、ゴクッと喉を鳴らす。

 居候していたときの小娘なら、出来はしない。
 でも今なら出来る……かも。

 この一ヶ月、スティーブンさんと一緒に積み上げてきた成果。
 呪術と魔導をスパルタで詰め込まれ、病院で優秀な先生に指導をしてもらった経験。

 ひとつの理論が私の中で組み上がっていた。

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