第5章 番頭さんに珈琲を
…………
××日後。私はぐったりと公園のベンチにもたれていた。
「ハルカ。ほら、ハンバーガー食べなよ」
レオナルドさんが、心配そうにバーガーを渡してくれた。
「ありがとうございます……」
私はお礼を言って、力なくバンズに口をつける。
「ちょっと痩せたね。大丈夫?」
「ええ……まあ。これもスティーブンさんといるための試練ですし……」
「そ、そう」
困ったように糸目のお兄さんが笑う。
呪いを制御すると誓ってはや×週間。
私は疲れてた。
少し前までの居候生活が死ぬほど懐かしい。
今は一日中忙しい。
何せ早朝から体力作りのジョギング、午前中は呪術の勉強、午後に病院でリハビリを受け、スティーブンさんが帰ってきたら実戦を兼ねた制御訓練。
むろん、その後のベッドにしっかりつきあわされる――コホン。それはさておき。
「スティーブンさん、容赦がないんですよ。氷の蹴り技を本気で出してくるし……」
何でそんなことをするかと言えば私の春の呪いと、氷の技が正反対の力だからだ。
私を鍛えるのにちょうど良いらしい。
「そ、それはすごいね。まああの人のことだから、手加減はしてると思うよ」
苦笑いのレオナルドさん。
そらしてるだろうが、何度か死ぬかと思ったわっ!!
あまりの生活の変化に、心身が悲鳴を上げている。
最初は『愛のため!』とモチベを上げられたが、早くも『前の生活に戻りたい』とくじけかけている。
「ホントに余裕のねぇ人だな。ちょっと前まで一般人だった奴が、スパルタについていけるワケねぇだろ」
行儀悪く足を組み、ザップさんが葉巻をふかす。
「で、成果の方はどうなんだ?」
「いや、それがさっぱりで」
と、ザップさんに軽くタッチ。瞬時にくたーっと、寝るザップさん。
「いや、ちょっとっ!! ハルカ!!」
慌てるレオナルドさん。
そういえばこの後、三人で病院に行くんだっけっか。
「心配ないですよ。私が離れたらすぐ起きますから」
手をヒラヒラ振って、ため息。
「むしろ薬を飲むのを止めた分、余計に制御出来なくなってる気もするし。
家電製品を扱えないのも相変わらずだし、このままだったら、どうしよう……」
力なく肩を落とした。