第4章 開き直りました
窓の外は暗い。
ソファからベッドに場所を移し、休憩を挟みつつ怠惰に過ごしていたら、こんな時間になってしまった。
今はお互いに満たされ、二人だけの時間を楽しんでいる。
私がうとうとしていると、スティーブンさんが小さく息を吸うのが聞こえた。
そして言った。
「昨日は、ごめん……」
それだけポツリと言った。
私はしばし考え――スティーブンさんの裸の胸にすがり、微笑んだ。
「いいんですよ。本当は倍額がいいんですが、公園で散財する程度には十分なはした金ですし――」
「だ・れ・が! 小遣いの額の話をしたっ!! それと、はした金で悪かったなっ!!」
痛い痛い痛い。耳ひねるな。ちょいと小粋な冗句でしょうが。
「冗談っす冗談っす。お小遣いは別にいらないですよ。で、何が悪かったと?」
単に『ごめん』だけ言われてもなあ。
心当たりがありすぎて、分からぬのですが。
「…………。昨日、気づかず君を攻撃してしまったことだ。
二度と同じ過ちはするまいと思っていたのに」
沈痛な面持ちで呟いた。
辛そうな顔を見るに忍びず、私は視線を宙に浮かす。
……。
…………。
えーと……。
するとスティーブンさん、少し冷たい目で、
「ハルカ。もしかして君、忘れてた?」
「え? あ! い、いえ、も、もちろん覚えてましたよ! いやあ許しがたい大罪ですね! ンもう! スティーブンさんったら♡」
ごまかしたつもりだったけど、スティーブンさんは深々とため息。
「本当に呑気な子だな。僕の方は謝るタイミングが無くて、ずっと悩んでいたのに」
まあ昨日はお互いバタバタしてましたからな。
言われてみたら思いだした。
昨日、一人で病院に行った帰り、戦闘に巻き込まれたのだ。
その際、スティーブンさんの技の余波が私を直撃した。
初対面時の悪夢再びである。
スティーブンさんの氷技は、私に触れた瞬間に水となった。
消防車の放水の直撃を受けた状態。ものっすごい水圧で十数メートル吹っ飛ばされたのである。
奇跡的にケガはしなかったけど、ずぶ濡れで帰り、大急ぎで着替えたり洗濯したりと必死だった。
「いえあれは、あそこにいた私がアホだったんです」
「だとしても、元はと言えば僕に責任がある」
……フォローしろや。