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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました



 スティーブンさんは肩をすくめ、きびすを返した。
「じゃ、一旦リビングに戻ろうか。そろそろ昼食にしたいし」
「あ、まだ地下室見てませんよ?」

 するとスティーブンさんの足が止まる。

「地下室? 見取り図でも見せようか? このアパートメントにはそんなものはない」
「え? でも私、前に――」

 ……あれ? いつ見たんだっけ? あれ? あれ?

 スティーブンさんを見る。ポケットに手を入れ、私に背を向けたままだ。

「あとこの家……時々、誰かが出入りしてませんか?」
「いいや」
 きっぱり言われた。

「でも……」
「ああ、クラウスは時々来るだろう? 彼のことかい?」
「そうじゃなくて……」
「じゃあ誰だい? 心当たりがあるのかな?」

 喉元にまで出かけたけど、思い出せずに止まる。
 思い出そうとすると、ふわふわとつかみ所がない。

「…………」
「夢でも見たんじゃないか? ハルカ」
 そう言われればそうなのかもしれない。現に思い出せないのだし。
「……そうですね。あはは。すみません」
「いいよ。おいで」
「はい!」
 
 そして私はスティーブンさんについていった。

 …………

 リビングで軽食を取り、スティーブンさんはテーブルを挟んで向かい側で、穏やかに私を見る。

「で、僕に関してまだ知りたいことは?」
「あ……その、もう大丈夫、です」

 自分のことを教えてくれない、とダダこねた私に、スティーブンさんは隠さず手の内を見せてくれた。
 
 といっても秘密結社の副官ってこと以外、新しく分かったことってほとんど無いなあ。

「ま、世界の均衡を守るとか、秘密結社とか大げさに言ってるけど警察の親類みたいなもんだよ。
 実際にあちらさんの要請で非公式に、事件の収拾のため動くこともあるしね」

「なるほど。危険な男(笑)ではないことが分かり、安堵いたしました」
「…………好きだなあ、その路線。何ならそれっぽく振る舞ってあげようか?」
「すんませんっしたー!」

 スティーブンさんの目が剣呑に光ったので、大慌てで謝っといた。


「それじゃ、僕の話はこれくらいにして、今度は君の話をしよう、ハルカ」

「あ、はい。おかげさまで呪いが悪化したんで、この家を出ることを勧められ――」

「許可出来ない」

 即答であった。

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