第4章 開き直りました
「話す気力は無いのにヤル気はあるとかサイテー!!
しかも、か弱い美少女を力ずくで押さえ込むなんて!! こんな汚い大人になりたくないっ!!」
「安心しろ、若人(わこうど)。誰もがそう言いながら否応なしに大人になり、いずれ同じことを言う若者を嘲笑する側に回るものさ」
しれっと言い――殺意のこもった目で私を睨んだ。
「ヒッ……! お、脅そうとしたって、屈する私では――」
「それとハルカ。一つだけ言わせてもらおう」
「え?」
「三十代は――大人の中では、まだ『若者』だ。いいな?」
「あい……」
『否定したらこの場で氷漬けにする』と暗に脅迫され、屈する以外、何が出来たであろうか……。
そしてまあ、速やかにベッドに連行されまして。
「ハルカ。愛してる」
「いやだから! 私はそういう気分じゃ――ちょっと、どこ触って……や、あ……」
あっという間に陥落しましたとさ。
…………
…………
くーくーくー。
私は朝の光の中、ベッドで爆睡してる。
「ハルカ。僕の可愛いハルカ。朝食が出来たよ」
誰かが耳元で甘くささやいている。ついでに口づけ。
「ん……あと、五時間……」
「朝食と昼食を一緒にするのは良くないな。胃に悪いし、何より太る」
「あと……五十分……」
「小賢しく言い直しても似たようなものだな」
「十五分……」
「ハルカ。いいから起きなさい。ベーコンエッグとクロワッサンサンドが君を待ってるぞ」
にゃー。軽く耳を引っ張らないで。
昨日、散々ベッドの上で運動させられたから……まだ眠い……。
「……エスメラルダ式血凍――」
「わー!! 起きます起きます起きますっ!!」
ガバッと跳ね起きた。
「おはよう、ハルカ」
爽やかに笑うのは、朝食ののったトレイを持ったスティーブンさん。
一回殴ったろか……。
…………
「ごちそうさまでしたー」
「ハルカ。薬を飲み忘れてる」
「…………」
「悪かったって。これは本物だ」
「はい」
水で錠剤を飲み、一息ついた。
色々聞きたいことがあるのに昨日は流されたなあ。
スティーブンさんを非難の目で見ると、彼は新聞から顔を上げ苦笑する。
「まずは顔を洗って着替えてきて。それから話そう。僕のことや、これからのことを」