第4章 開き直りました
そう。呪いの進行を止める薬をすり替えられていた。
『力場』とか、そこらも確かに関係あるんだろうけど、悪化の一番の原因はスティーブンさんの行為らしい。
「病院の先生にも見てもらって断言されました。ただのビタミン剤だって!」
スティーブンさんは返答しない。
かといって悪事がバレて、狼狽した様子でもなく黙って私を見ていた。
「何でそんなことをしたんです! おかげで呪いが進行して、私、この家を出るしかなくなったじゃないですか!
それとも、最初からこうしたかったんですか!?」
「……何?」
スティーブンさんが初めて眉をひそめた。
何を白々しい。私はほとんど涙目で吐き出した。
「わ、私に飽きて家を追い出したいなら、普通にそう言えばいいじゃないですか!!
こんな、こんな風に、回りくどい方法を使って、自分から出て行くようにさせるなんて……!!」
卑怯すぎる――その言葉は喉の奥にしまい込まれた。
「私、スティーブンさんが、分からないです……」
あふれる涙をぬぐう。
いつも自分のことを隠して、だけど私の行動は制限して信用してくれない。
「ペットみたいに気が向いたときだけ可愛がって、それ以外は家につないで……。
私の呪いが進行しようが、この街から出られなくなろうが、あなたには――」
罵倒を言い終えることは出来なかった。
スティーブンさんが、私を抱きしめたからだ。
「ごめん……ハルカ。本当に、ごめん……」
「離して、下さい……っ!!」
「嫌だ」
「離せっ!!」
怒った。でも、わめこうがもがこうが、スティーブンさんはビクともしない。
私を抱きしめている。
「泣かせてごめん……」
「今さら、白々しいですよ」
「分かってる。僕が……傲慢だった。謝る。心から。
君を危険から遠ざけていれば僕のそばにいてくれるって、思い上がっていた」
「危険から遠ざける!? でも私の呪いは――」
「君の呪いは取るに足りないレベルだ。このヘルサレムズ・ロットの水準ではね」
い、言い切った……。私が『これさえ無ければ』と朝に晩に悩んでる呪いなのに。
「もちろん君が真剣に悩んでいることは知っているよ。だが相対的には軽微な部類だ」
「軽微って……!」
「僕の部下にはより重い宿命を背負った奴もいる」
スティーブンさんはそう言った。