第4章 開き直りました
「す、すみません。落としたことを言い忘れてて……」
「『落とした』? 茂みの中で木の葉に覆われ、故意に隠してあるように見えたけどね」
尋問を受けている気分だった。
「ハルカ。僕がメッセージを送った後、どこに行っていた?」
威圧するように上から見下ろしながら言う。
「それは……その……」
「怒らないから言ってみなさい」
いや怒るだろ! てか今、もうすでに怒ってるだろっ!!
「その……ちまたで評判のスイーツを買いに♡」
「へええ。僕も一緒に食べたいな。どこの通りのどこの店? 何て言うスイーツ? 金額は? そもそも、どこからその店の情報を知ったのかな?」
「えーと……ザップさんに教えてもらって。詳細はちょっと……」
「なるほど。じゃあザップに今から聞こう」
「あー!! 待って待って待ってっ!!」
敵がスマホを取りだしたので、慌てて止める。
「なぜ止めるんだい?」
「いえ夜中ですし迷惑ですよ!!」
「どうせ愛人の家だ。迷惑なんてことはないさ」
いや超迷惑なのでは。
「あー!! す、すみません! 間違いました! ザップさんではなく、通りすがりの知らない人でした!!」
「へえ。通りすがりの奴から聞いた店にノコノコ行ったんだ。よく売り飛ばされなくてすんだもんだ。
あ、そうだ。食べた菓子に妙なものが混入されてないか、精密検査しなくちゃな」
うわあああー。
野郎! 瀕死の獲物をいたぶるのを楽しんでやがるっ!!
「いえご心配にはおよびません! ではそろそろ寝ますので!!」
ソファから立ち上がり、大慌てでリビングから立ち去ろうとしたが。
ガ ン ッ ! !
ここ……あなたの家でしょうが……。
私の顔のすぐ横で、壁にヒビが入っていた。氷の蹴りを受けて。
壁のヒビから蜘蛛の巣状に広がった氷が、私にぱらっと降りかかる。
氷点下の冷気が、私の心を縮み上がらせた。
久々の脚ドンをやらかしたスティーブンさん。私に顔を近づけ殺気混じりの声で、
「ハルカ。僕が本気で怒る前に話した方がいいと思わないかい?」
だから、もう怒ってるじゃん。
私は観念して言った。
「病院に行ってました。呪いが悪化してるって」
スティーブンさんは無表情。予想してたみたいに。
「あなたが私の薬を勝手にすり替えたからですよ」