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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました



 私はそーっと茂みから出て、身体を低くしながらその場を離れようとした。
 ん? 待てよ。私はふと考える。
 私と悪党の距離が遠ざかった。
 と言うことは――。

「うわ!! こいつ!! 急に起きやがったっ!!」

 地響き再びっ!! 私はバランスを崩してまた転んだ。
 ひ、膝がいったいっ!!

 だが真後ろで、さらに最悪なことが起こってた。

「油断するからだ、馬鹿。エスメラルダ式血凍道――」

 全身が総毛立つ。

「ちょっ……!! スターフェイズさん、タンマタンマ!! 俺まだここにいるって!!」

 だがスティーブンさん、相当イライラがたまってるらしい。

「――エスパーダ デル セロ アブソルート【絶対零度の剣】!!」

 ヒヤリとするものを真後ろに感じたかと思った瞬間。

 ばっしゃーんっ!!

 私は十数メートル吹っ飛び、芝生の上を盛大に転がった。

 何が起こったかと言えば、悪党を貫通した氷の剣が、勢いを減じず私にまで達した。
 そして私に触れた瞬間に、呪いで氷が水に変わったのだ。

 水と言えど、スティーブンさんの必殺技だ。その勢いは、暴徒を鎮圧する『放水砲』の直撃に相当する。

「え……何で、氷が水に……」

 ザップさんの戸惑う声が聞こえた。どうやらしげみで、私の姿までは見えていないらしい。
 
 私はよろめきながら立ち上がり、全身ずぶ濡れのまま走り出した。くそ! 身体が重い、痛い!!

 F○CK!! 私が何したっていうんですか、神様ーっ!!

 身も心もズタボロで、私は公園をひた走ったのであった……。

 …………

 …………

 私は身体のあちこちを、包帯とガーゼで覆われていた。
 そしてソファに力なく横たわり、精神的な拷問に耐える。

「ハルカ。今日の午後、どこにいた?」

 久しぶりに早く帰ってきたかと思うと、まるで知っていたかのように私の全身に救急処置を施した男――スティーブン・A・スターフェイズ。

 だが彼の声はあまりにも冷ややかだった。

「危ないから家に帰れと、僕はそう言っただろう?」

 時刻は深夜近い。私はソファで震えながら、

「も、もちろん、すぐ家に帰って……」
「そうか。それと君のスマホを公園で見つけたんだけどね――」

 まずい……公園に隠したスマホの回収を完全に忘れてた。

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