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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



「でも昨日まで全然、平気だったのに」
「半月以上も宿無しの生活だったんだ。身体に疲れだってたまるさ。さて、一回着替えようか」

 女性用下着とパジャマ、タオルを持って、こちらに戻ってきた。

「はい……え?」

 …………

 落ち着け落ち着け落ち着け。

「脇の下を拭くから、ちょっと腕を上げてくれる? ああ、もう少し前屈みになれるかな?」

 大きな手にしっかりと肩を支えられる。それだけで心臓が跳ね上がりそう。

 よくしぼったタオルが、ムダの無い手つきで汗ばんだ背中を拭いていった。

 私は今、ベッドで上半身裸でいる。もちろん乾いたタオルをいただいて前を隠してるのでご安心を。

「……はい」
 落ち着けと、タオルで胸を隠しながら自分に言い聞かせる。
 この場で変にドキドキする方が、おかしいだろう。

 落ち着け。マジ落ち着け。
 スティーブンさんは私を『数日、面倒を見ることになった迷子』としか見てないから!
 女扱いしてないから、身体を拭こうとか言い出せるんだから!

 ううう。以前にお風呂を見られたときは、私にももっと余裕があったのに。

 色々と親切にされ、スティーブンさんのことを、ほんのちょっと意識するようになったから、照れるのだ。
 でも仕方ないじゃないか。スティーブンさん、カッコいいんだもの。
 
 またタオルを絞る音。
「はい」
「え?」
 絞ったタオルが後ろから差し出された。
「身体の前側。僕が拭くわけにいかないだろう?
 僕は後ろを向いてるから、終わったら教えて。身体が冷えないうちに上を着るからね」
「は、はい!」
 絞ったタオルを受け取り、顔を真っ赤にして身体を拭く。
 ちょっと冷たいけど、でもタオルでごしごし擦ると気持ちいいなあ。

 ……ついでに下半身も一気に拭いてしまうか。

 サッと拭けば後は着替えだけで終わりだ。スティーブンさんも私に時間を取られずにすむ。
 チラッとスティーブンさんを見ると、ちゃんと後ろを向いてくれてた。

 なのでちょっとベッドの上で立ち上がり、思い切って下着を下ろす!
 ヤバい。自分で自分の格好が恥ずかしい!
 よし。お尻とか腿とか前とか、一気に拭いちゃおう。
 私は前にかがむように、身体を拭こうとして。
 
「……て。え……?」

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