第1章 連れてこられました
ヒヤッとしたものを額に感じ、目を開ける。
場所は、私に用意された客室だ。
部屋は薄暗く、ベッドサイドのランプがついてるだけ。
時計は、深夜の三時を指していた。
「起こしてしまったかい? ごめんごめん」
ベッド脇に立っているのはスティーブンさんだ。
「点滴がやっと終わった。明日は口から飲めるといいな」
彼は病院の看護師さんみたいな手つきで、私の腕から点滴を外すと、止血のテープを貼る。
……額。冷たい。
「こらこら、取っちゃダメだ」
額に手を伸ばそうとすると、押さえられた。
「冷やっこい……」
「氷のうと、あと氷枕を用意した。頭を上げるよ」
大きな手が私の頭を支え、頭の下に冷たい枕が差し入れられる。
冷たくて気持ちいい。
「あれ? でも何で?」
私は呪いにかかってて、氷とかは一気に常温の水になっちゃうのに。
「君の呪いをすり抜ける特殊な氷だよ」
氷のうの位置を調節しながら、スティーブンさんは言う。
「何の氷……?」
するとスティーブンさんは顔を近づけ、私の耳元で低いひくーい声で、
「僕の血」
「――っ!」
一瞬覚醒し、目を開けると、スティーブンさんがプッと笑う。
「ははっ。半分冗談だよ。安全な氷だから安心しなさい。さ、寝た寝た」
……『半分』?
しかし彼はさっさと私の布団をかけ直した。
そして自分は隅のソファのところに行き、横になる。毛布をかぶりながら、
「気持ち悪くなったり、熱で苦しくなったら呼んでくれ。必ず起きるから」
私はコクンとうなずく。
「じゃ、電気を消すよ。おやすみ」
「おやすみ、なさい……」
明かりが消える。
「…………」
変な気分。それでも目を閉じると、眠りは迅速に訪れた。
…………
翌日。
スティーブンさんは体温計を見ながら言った。
「うーん。38℃か。昨日よりは下がったけどね。
まあ吐き気が収まっただけ、良しとしよう」
私の熱は翌日になっても、あまり下がらなかった。
水分は口から取れるようになったけど、謎のだるさが続き、起きていられない。
「すみません……お掃除とかさせていただきたいのに、ご迷惑ばかり……」
「だから何度も言っただろう? 気にしなくていいって」
スティーブンさんはチェストを開け、何か出していた。