第4章 開き直りました
…………
「――はっ!!」
我に返った。
「どうしたの?」
「い、いえ。何だかずいぶん長い夢を見ていた気がして。
いや夢だけど夢じゃないというか」
「あら、幻聴? 幻覚? 検査とカウンセリングも行っとく?」
「いやいや戯れ言っすよ先生。サラサラとカルテに書き込まないで下さい」
私は今、病院に来ております。
スティーブンさんがお仕事なので、遠出は禁じられていますが、こっそり一人で来ております。
「そう? でも気になるなら診断受けてみてね。外から来た人はカルチャーギャップで色々不安定になりやすいから」
先生はにっこり笑う。
「はあ……」
まあ現に今、子供に診断されるというカルチャーギャップを受けているが。
私は周囲が一定の温度になる『常春の呪い』を受けていて、それゆえにヘルサレムズ・ロットから出られない。
進行を止める薬自体は飲んでいるはずだから、それ以上悪くなるはずがない。
……んだけど、もしかして『呪いが強くなってるのでは?』と思うことがあった。
スティーブンさんと一緒に病院に行きたくとも、彼はご多忙。
なので、私一人で診察を受けることにしたのだ。
が、いつも薬を出してもらってる病院に行こうとしたら、テロだか爆破だかで焼失していたっ!!
なので『ブラッドベリ中央病院』という病院に来ていたのだ。
で、ルシアナ・エステヴェスという人間だか異界人だか謎な女医先生に診てもらってたのだが。
「先生、私の呪い、進行してるんですか?」
女児にしか見えない眼鏡の先生は、
「うん。してるよー」
……サラッと言うなあっ!!
「な、何でですか!? 薬は飲んでたのに!!」
すると先生は眼鏡をかけなおし、私を見た。
「もしかして、君の呪いに強い人と一緒に住んでたりする? その人の家に」
は!?
「え、ええ。まあ……」
昼に散歩に行く他は、一日中、家でゴロゴロしてたけど。
「やっぱり。それね。外に出られない呪いが内にこもった結果、君の中にさらに深く侵食したのよ」
たっぷり一分ばかり呆然とし、
「……どうすれば、いいんでしょうか」
先生はペンをクルクル回しながら、
「その人の家から出るのが第一ね」
「…………っ」
つまり、あの家から出ろと。