第4章 開き直りました
スティーブンさんを押し倒すように、彼の上に四つん這いになって言った。
「私はスティーブンさんを甘やかしたいです」
「…………」
するとスティーブンさんは目を丸くし……ほんの少し、顔を赤くした。
「……あのさ。そういうこと言うと、僕がつけ上がるとか考えないのかい?」
「いいですよ。私、スティーブンさんがいない間に身体を鍛えることにします。
可能性を甘く見ないでいただきたい。そのうち勝ちますから」
「へええ~?」
ケダモノの目がキラリと光り、
「どわっ!!」
相手がどう動いたかも分からない間に、私はどさっとベッドの上に。
立場逆転。押し倒された!!
スティーブンさん、ご自分の青シャツのボタンを外しながら、
「僕に勝つ気でいるんだ。これはうかうかしていられないな。上下関係をちゃんと教えてあげないと」
クールを装ってるが、口元がゆるんでいるのでイケメンが台無しである。
てか、さわっと鎖骨を撫でてくる。
あ。キスされた。
「あと上下関係って。私たちは対等な立場の――」
「ん?」
「…………」
家主と居候って対等か?
しかも片やマフィアのナンバー2(多分)。片やお小遣いもらって遊んでる×××。
「すみません。あなたがボスです。二度と下克上は考えませんので――今夜はおててつないで寝ましょう」
とっとと降伏したが、
「いーや。ピュアな三十代を傷つけた罪は償ってもらわないとな」
ピュアか? ホントにピュアなのか?
その間にも、プチプチとこちらのボタンを外され、冷や汗をかいた。
「あーれー。おたすけー」
「僕に勝つんだろう? なら抵抗しないと。まあ抵抗されても、力ずくで押さえつけるけどね」
「犯罪っぽい物言い止めて下さいな」
とか言いつつ、両手首押さえられ、何か笑ってしまう。
でも本当に鍛えないとな。この街にずっといるんなら。
ずっと?
いや、そんなはずはない。私はいつか家に帰る。
「ハルカ。好きだよ」
「……私もです。スティーブンさん」
いつかはヘルサレムズ・ロットを出て行く。
でももう少し先になるといいな。
そう思いながら、私はスティーブンさんの腕の中、溺れていったのであった。
――『スポーツな話』・END