第4章 開き直りました
そして地獄の柔軟体操がどうにか終わった。
「もう、無理……儚い一生でした……」
ベッドに倒れ込み、私は口から魂を出す。
弱々しい目で家主を見上げ、
「スティーブンさん……私、もうダメです……今まで、ありがとう、ございました」
「そっかそっか。じゃあそろそろ寝ようか」
完全にスルーされた!
「どうか私が死ぬ前に……この家のホームシアターで……スティーブンさんと一緒に……サメ映画鑑賞……オールナイトを……」
「あいにくと一生叶うことのない望みだな。僕の家でそんな低俗映画を観ることは許さん」
しかも冷酷非情であった。低俗じゃないもん!
「ガクッ」
息絶えた私を横目に、スティーブンさんは室温を調整し、部屋の明かりを落とした。
そしてベッドにギシッと乗り、
「ほら、起きた起きた。これからだろう?」
背中から私を抱きしめ、うなじに口づけた。
「えー?」
後ろから胸を揉まれつつ、異議を唱える。
「『えー?』じゃないだろう? 君が疲れていたから、結局、予約もキャンセルしたんじゃないか」
あ。そういえば映画の予約を入れてたんだった。完全に忘れてた。
「慰めてくれよ、ハルカ」
ええい! 耳元で色っぽくささやかんで下さいっ!
「わ、私、今日はお相手が難しいくらい疲弊しきっておりまして」
胸を触る手を外そうとしたが、今度はパジャマのボタンを外そうとしてきた!
「運動不足の身体に活を入れた僕に感謝してほしいな。身体も少し柔らかくなっただろう? これから毎晩、寝る前に柔軟体操をすること。僕が帰れない日も。いいね」
マジか。
でもボタンが外され、デカい手がパジャマの中に忍び込む。
「ん……サボったら……?」
反応すんなと自分に言い聞かせながら返答する。
そしたらスティーブンさんは、胸ではなく私の背に指を這わせ、
「背骨をへし折る」
ゾクッ!!
「折るのですか!?」
ポッキーのようにっ!?
「まあやろうと思って出来ないこともないよ」
声が本気だっ!!
「鬼軍曹っ!!」
「はっはっは。君の健康を思いやって言っているのに、あんまりだなあ」
とか何とか言って、背中のホックを外した。
「ちょっと……」
身をよじったが、スティーブンさんは胸に直に触れ出した。