第4章 開き直りました
スティーブンさんは健康的に笑う。
「それじゃ、ちょっと走りに行こうか」
「え。お断りします」
「……ハルカ?」
室内温度が10℃ほど低下いたしました。
だが譲れないものは譲れない!
「あ、明日から! 明日から頑張ります!! スティーブンさんは貴重な休日ですからおやすみ下さい!!」
逃げようとするが、ガシッと襟首つかまれた!
「ハルカ。その『明日から』は永遠に来ない。思い立ったらすぐ始めるんだ」
「じ、じ、じゃあ私一人で走って参ります! スティーブンさんはソファで寝ていて下さい」
「いや僕も走るよ。最近、デスクワークが多くてなまってるからね。
運動はいいぞ。ストレス解消になるし循環器機能も改善する、免疫力もつくし、もちろんダイエットにもなる」
「ケガをいたします! スティーブンさんに何かあったら!!」
「屁理屈ばかり言うんじゃ無い、さ、行くぞ!」
スティーブンさんは私を引きずってゆく。
「いやああああ!」
この世の終わりのような声が響いたのであった。
…………
…………
そしてジャージに着替え、公園のランニングコースに来たのであるが、
「す、スティーブンさん……あ、足が痛い……」
「まだ一周もしていないのにかい?」
私に合わせてスローペースで走ってたスティーブンさんは、汗どころか息も切らしてない。
「もしや急に激しい運動をしたから靱帯に損傷が……!!」
私は、いだだだと、足を押さえるが、
「単なる筋肉痛だろう。少しベンチで休もうか」
呆れたように言われたっ!!
「やっぱり元々基礎体力が無いから、持久力が続かないか……」
ベンチで私の足の状態を確かめながら、淡々と刃を突き刺すスティーブンさん。
「すみません……」
けど彼は立ち上がった。
「僕こそ悪かったよ。嫌がっているのに無理に誘って。帰ろうか」
「え?」
「こういう状態で無理をすると、本当に足を痛める。今日は身体を動かす程度のつもりだったし、目的は果たしたよ」
急に悪いことをしたような気になってしまったが、
「帰ろう、ハルカ」
「はい」
私たちは手をつなぎ、家路についたのであった。
「ルームランナーでも買うかなあ……運動量もチェック出来るし」
ボソッと、敵が恐ろしいことを言ったのが聞こえた気がした……。