第4章 開き直りました
私はスティーブンさんの首筋につかまってそのまま倒れ込み、足をバタバタさせる。
「何だかんだで明日には治るかと思うと、切ないです」
オオカミスティーブンさん。可愛かったのに。
スティーブンさんは逆らわず、ゴロンと横になった。
「僕もだよ……君が不安がらず、ずっと僕だけを見て笑ってくれていた」
「え?」
「……いや、何でもない」
オオカミスティーブンさんはそう言って、大あくび。
「そろそろ寝よう」
立ち上がり、尻尾をパタパタ振りながら寝室に向かう。
「僕は一刻も早く人の姿に戻りたいね。今日一日クラウスに仕事を任せきりにしてしまったし、君にちゃんとした食事もさせられなかった」
すんませんねえ。呪い体質でっ!!
私はスティーブンさんに乗って寝室に向かう。
疲れたけど、楽しかった。
感情をオープンにして好きなだけ走り回るスティーブンさんは、とても楽しそうだった。
「スティーブンさん、もっと私にワガママ言ってくれていいのに」
そういえば、言葉が使えるようになってから、甘噛みをピタッとやらなくなったのが、どこか寂しかった。
「君はいい子すぎるんだよ」
スティーブンさんはそう言って、オオカミのお顔で笑ったのだった。
…………
…………
翌日。クラウスさんがスティーブンさん宅に来たのだが。
「まさか接触感染性があるとは思わなかった。
私のミスだ。幸い、軽度のものなら感染せず完治するらしいが」
そう大真面目に説明するクラウスさん。
ただし、その頭からはにょきっと、可愛らしいクマの耳が揺れている。
獣化光線とやらは、ウィルス散布剤みたいなものだったとか。直接触ったりすると移るらしい。
「他の重度接触者がいなかったことが不幸中の幸いだ。
とはいえミス・ハルカにはどれだけお詫びをしてもしたりない」
…………。
「そんなことはないさ。君も気にしてないよな? ハルカ」
人間に戻ったスティーブンさんは上機嫌だ。
私は沈黙を貫く。
けど接触感染ってことは、昨日のペット誘拐犯は今頃大変なことになってるのでは……。
まあいいか。自業自得だ。
クラウスさんは、
「外見は治っても、スティーブン、君はまだ菌のキャリアだ。
申し訳ないが、もう数日、自宅にいてくれたまえ」