第4章 開き直りました
もちろん、彼女に牙をむいてるスティーブンさんが言うことを聞くわけがない。
「さあどうぞ! 本当の飼い主なら言うことを聞くはずですよね!?
私が脅してるって言い張るのなら、距離を取りましょうか? やって見て下さい!」
「…………」
ペット誘拐犯はとたんに無表情になり――。
「私のセバスチャンをこんなに錯乱させて! 力ずくでも返してもらうわ!!」
「うわ……!!」
銃を取り出しやがった! 最初からそのつもりだったのか!?
周囲のギャラリーが巻き添えになりたくないと慌てて逃げていく。
「大人しく渡してたら死ななくて済んだのに――悪いわね」
誘拐犯、いや強盗の銃口が私に向けられた。
「スティーブンさん!! 逃げて下さい!!」
だけどスティーブンさんは私を庇うように前に出、跳躍!
そして――。
「エスメラルダ式血凍道――アグハ デル セロ アブソルート【絶対零度の小針】!!」
はあ!?
そして。ペット誘拐犯は銃を私にぶっ放そうとした姿勢のまま、氷の柱となった。
敵は倒された。
公園に絶対零度の風と、沈黙が下りる。
私はほーっと胸をなで下ろし、地面に降り立ったオオカミに、
「言葉がしゃべれるなら、さっさと言って下さいっ!!」
公園中に響く怒声を放ったのであった。
…………
そして無事に自宅に戻り、私たちはケンカしておった。
「元々数日で治るって、クラウスも言っていただろう?」
耳を若干寝かせつつ、オオカミスティーブンさんが言う。
「人語を話せるまで回復したのも、本当にあのタイミングなんだ。
でなければ、大勢の人前で芸をするわけがないだろう?
……あと肉球はいい加減にしてくれないか、ハルカ」
ふにふにふにふにと肉球を押しまくる私に、苦言を呈する。
スティーブンさんは思ったより回復が早かったみたい。
人語を話せると同時に必殺技の使用も可能になり、それで切り抜けられたのだ。
獣化も明日には解けるようだ。
それは良かったけど。
「ものすごく運動させられトラブルに巻き込まれ、散々な一日でした」
私は不満たらたらであった。
「君が運動不足なだけだろう? ちょっと走っただけで、だらしのない。
今度、僕と早朝ジョギングするかい?」
「No thank you!!」