第4章 開き直りました
口輪まで用意してるのなら、マジなペット誘拐業者だ。
今までもこんな風に強引に、人様のペットを盗んでいたに違いない。
「つきあってられません。帰りましょう、スティーブンさん!」
スティーブンさんもうなずく。なので背中に飛び乗ろうとしたが、
「そうやって逃げるつもり!? 犬泥棒!! 私の犬を返して!!」
ううう。女性のキーンとした大声で耳が痛い!
けど『何だ何だ』と人が集まってしまった。
女性は周囲に、私が愛犬を盗んだと言い立てている。
私は辟易しながら、
「スティーブンさん。あなたのせいですよ。早く帰ろうって言ったのに」
だから私にうなるなっての! 今は逆効果なんだから!
「さあ、これだけ大勢の証人がいるのよ! 早く私のセバスチャンを返しなさい!」
証人って何すか。野次馬でしょう。
この人垣を無理くり越えることは不可能じゃないんだろうけど……。
でも、ここはよく時間をつぶす公園だ。
無理に逃げても後々、もめるかもしれない。
ならばギャラリーが多いのを利用して、堂々と倒して帰る!!
「スティーブンは私のペットです。その証拠に私の言うことは何でも聞きますから。
……はい、『お手』!!」
スティーブンさん、一瞬固まった。
でも渋々という感じで『お手』をする。
だから嫌そうな顔をしないで下さい。もっと協力して!!
あ。でも素敵。オオカミの肉球。ふにふに。
「はい、伏せ! おまわり!!」
スティーブンさん。殺気だけ募らせつつ、命令を聞いてくれる。
ああ! あれだけ私を振り回すスティーブンさんが、今は私の命令に忠実になっている!
何か危険な快感を感じるンですがっ!!
そのせいか、周囲の野次馬も、
「やっぱあの子が飼い主だろ。言うこと聞いてるし」
「でもあのデカい犬、ずっと嫌そうにしてるぞ。やっぱ盗んだんじゃね?」
スティーブンさんんんっ!!
誘拐犯は勝ち誇ったように、
「ほらごらんなさい! やっぱりその子は私の子! さあ返して!!」
だが譲るわけには行かぬ。
今、スティーブンさんを守れるのは私だけなのだ。
「私が飼い主じゃないとして、だからあなたのペットだという根拠はどこにあるんです?
ならスティーブンさんに命令してみてはどうですか?」
「そ、それは……」