第4章 開き直りました
「お知り合いですか?」
一応、スティーブンさんに聞いてみるけど、首を左右に振られた。
けど女性は芝居がかった仕草で、スティーブンさんに、
「探したわ、セバスチャン!! さあ、一緒に帰りましょう!!」
「……はあ?」
私はスティーブンさんの背中から下り、とりあえず彼の前に立つ。
「あの、お間違えですよ。これはスティーブンさ……スティーブンと言って、私の忠実な愛犬です」
こら、後ろでうなるな畜生。
「嘘よ!! 私のセバスチャンよ!! こんな奴に誘拐されて怖かったわね。さあ帰りましょう!!」
スティーブンさんの首をむんずとつかんだ。
だが相手は巨大オオカミ。
殺意むき出しでうなられ、慌てて手を離した。ざまぁ。
「分かったでしょう? これ、うちのスティーブンだし」
だからうならないの、スティーブンさん!!
「何言ってるの! この子の飼い主は私! 貴女と来たら、さっきから見ていたら、背中に乗ったり耳を引っ張ったりして!!
今もあなたにうなっているじゃない!! 顔にそんな大きな傷までつけて……何て可哀想!!」
高そうなバッグからハンケチを出し、よよよと泣き崩れる。嘘泣きっぽいけど。
しかし妙なことになってきた。
察するに、難癖つけてペットを誘拐する腹づもりなんだろう。
転売か毛皮目当てなのか知らんが、どっちにしろ連れて行かれたら厄介だ。
「この傷は元々あったものだし! だいたい私が飼い主じゃないなら、とっくに逃げてるでしょう!!」
スティーブンさんも私にぴったり寄り添う。
しかし女性は予想していたかのように、
「虐待が怖くて怯えているのよ。さあ帰りましょう!!……ひっ!」
最後のは悲鳴である。
スティーブンさんが、再び牙を剥きだし、ものすごい形相でうなったからだ。
だが敵もさるもの。
「ああ……私に向かって牙をむくだなんて。心の傷は深いのね。どうかあなたから目を離した私を許してちょうだい!!」
とか何とか騒ぎつつ、バッグから超頑丈そうな口輪を取り出した。
ちょっとちょっと!