第4章 開き直りました
「ん……」
何かが私の髪をつついてる。
半分寝ながら、無意識にどかそうと手を動かした。
ん?
もふっと手が毛に埋もれた。
湿った何かが私の手に触れる。ちょっと舐められた。
そだ……何か昨日、色々あって……。
はっはっ、と獣みたいな息づかい。
大きな身体を押しつけて、何とか私を起こそうとしてる気配。
私は寝返りを打ち、薄目を開けた。
すると目元に傷がある、どデカい黒オオカミが見えた。
しぱしぱとまばたきし、私に身体をこすりつける。
私はあくびをし、
「スティーブン……伏せ」
痛い痛い。腕を甘噛みすなって。起きたから起きたから!
…………
洗面所で顔を洗うと、スティーブンさんが外でお座りして待ってた。
「ども、おまたせしました……」
しかしまだ眠いなあ。巨大生物が横で寝てたせいか。
夜、何度かベッドから押し出されそうになったし。
「ん?」
スティーブンさん、鼻先でテーブルを指している。
そこにはスマホ。あ、着信があったのか。
「あ、クラウスさんからですよ。多分、あなたが心配なんでしょうね。すぐかけますから」
ソファに座り、スマホを操作する。
……あの。重いから、膝に前足をかけんで下さい。
落ち着きがないなあ。
…………
一時間後。
電話の後、身だしなみを整え、用意された食事をすませ、新聞を取ってきた。
そのあたりでやっとオオカミさんも落ち着いた。
今は床に新聞を広げ、熱心に目で追っている。
…………。
「じゃ、私、掃除しますから」
オオカミさん、チラッとこっちを見て軽く尻尾を振ったのみ。猫か。
「何かあったら呼んで下さいね」
小さなうなり声が聞こえただけ。鼻先で器用にページをめくってる。
「…………」
何すか。さっきまで、ずっとつきまとってたのに。
「スティーブンさん~」
とてとてと、巨大オオカミさんのとこに行き、どっかり背中に乗る。
あ、ちょっとうなった。でも新聞に集中してるのか、そこまで怒ってない。
私は頭をすりすりし、オオカミスティーブンさんの目元の傷を撫でる。
いい匂い。温かい。心臓の鼓動が聞こえる。
眠い。
すやぁ……。
私はスティーブンさんの背中にしがみついたまま、すやすや寝てしまった。