第4章 開き直りました
私を屈服させスティーブンさんは落ち着いたのか、尻尾ぱたぱた。
可愛いなあ。
なので私はたまたま手元にあったテニスボールを手に取り、
「取ってこい、スティーブン!!」
ポーンと投げたボールが放物線を描き、部屋の隅でバウンドし、コロコロと見えなく……見えなく……。
「あ」
振り向いたスティーブンさん。ものっすごい、鼻面にシワつくって、唇まくって牙出して……オオカミの生態に詳しくない私でも分かる。これ激おこである。
「冗談冗談ーっ!!」
腕かまれた! あ。でも全然痛くない。甘噛みだ。
だが少しずつ力が入ってくる。
「ごめんなさい! 分かりました! 二度とからかったりしませんからー!!」
だが、畜生の甘噛みはしばし続いたのであった。
…………
スティーブンさんが口を離したので、ようやく立ち上がれた。
畜生はまだ落ち着かないのか、うろうろと歩いていた。
「それじゃ、もう寝ましょう。安静が重要だって言ったじゃないですか」
真っ黒オオカミはこちらを見上げうなずいた。
『見上げ』というが、通常のオオカミよりデカいので目線が恐ろしく近い。
恐怖を覚えてしかるべきデカさであろう。
が。
「可愛いっ……!!」
我慢出来ずにガバァッと抱きついた。
もふもふ!! 超もふもふ!! 首毛がっ!!
もふっと埋まる! それは超もふもふと!!
……スティーブンさん、今度は怒らなかったが、ものすごいお困りのご様子で私を見下ろしていた。
「あ! 背中乗っていいですか、背中!! こういうの憧れてたので!!」
デカい動物の背中に乗るという子供の頃の夢が!
……スティーブンさん、深々とため息ついてる。
でも『伏せ』の姿勢になり、私を乗っけてくれたのだった。
…………
そして私の部屋についた。
でも私は背中にぴとっと張り付いて離れない。
「スティーブンさん……も少し背中に乗っていいですか?……うお!!」
振り落とされた!! 血も涙もねぇ!!
床で『あいたた』と頭をさするが、スティーブンさん、ぶるぶる身体振ってるし!!
そして奴は小さくあくびをし、ジャンプして私のベッドに乗る。
「えー。私のベッドで寝るんですか?」
いや『文句あるか』と言いたげに牙むかないで。
やっぱ野生化してないか、スティーブンさん!?