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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました



「彼も戸惑っているのでしょう。精神的なショックもあるようです。
 当初は入院治療を提案しましたが、貴女を一人で家に残すのが心配だと。
 自宅療養の意向を示しましたので、ここに連れ帰りました」

 こんな状態になっても、私を心配してくれてるんだ、スティーブンさん……。

 てかこの状態のスティーブンさんと、どうやって意思疎通したんですかクラウスさん!!
 あと疑うのもアレだけど、ホントに私の心配してんですか? 

 やっぱり不機嫌そうにうなってんですが。

 クラウスさんもそれに気づき、

「落ち着きたまえ、スティーブン。ミス・ハルカは君の身を真剣に案じている。
 彼女なら君を動物のように思わず、獣化が解けるまで尊厳を持って扱ってくれるだろう」

 一、二回会っただけの私に、何でそこまで全幅の信頼を寄せてんですか、クラウスさん。

 けどスティーブンさんはうなるのを止め、気まずそうに座った。

 クラウスさんは彼の前に膝をつき、

「不在中のことは私に任せてくれたまえ。しばしライブラを離れ、治療と休養に専念してほしい」

 と、頭を撫でたり背を軽く叩いたり。
 スティーブンさんも『すまない』というように、クラウスさんに身体をこすりつけた。

「気にしないでほしい。君が私をかばってくれたから、私は無事だったのだ」

 ……構図が構図なので、親友同士の会話というより『主人と忠実な大型犬』にしか見えないが。
 
「あ、でもご存じの通り、私は呪い体質なんで調理家電が全く使えないんですが……」

 冷蔵庫、電子レンジ、コンロ、トースター。
 私は、温度が変わる家電は基本的に扱えない。最悪、壊してしまう。肉料理とかどうしよう。
 すると控えていた執事さんが、

「専用キッチンに缶詰や真空パック食品を大量にストックしておきました。
 不足がございましたら手配いたしますので、ご連絡下さい」
「あ、ありがとう、ございます……」
 
 なるほど完全に防災食になるってわけか。まあ事情が事情だから、仕方ないか。
 
「時々様子を見に参ります。よろしければ明日のディナーをご一緒に……なぜうなるのだ、スティーブン」

 厚い友情を確かめ合った直後だというのに、今度はクラウスさんに牙向いてるスティーブンさん。

 嫉妬? いやまさかねえ。

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