第4章 開き直りました
■閑話「オオカミになられた話」
「こんにちはこんばんは、ハルカでございます。
ん? 唐突に『閑話』って何だよって?
いえ暗めな話が続くから軽いのを入れるのもアリかなあと。
まあまあ、たまにはいいじゃないですか」
「ミス・ハルカ? どうされました?」
――はっ!
「わ、私は今何を口走って……!!」
慌ててキョロキョロと周囲を見回す。
ここはスティーブンさんのおうち。
そしてリビングにはクラウスさんと、クラウスさんの執事のギルベルトさん、他一名がいる。
「今のお話は独り言ですか? ミス・ハルカ」
「す、すみません。急に電波が降ってきて、ついそれと歓談を……!」
「無理もありません。スティーブンがこんなことになり、心労も大きいことでしょう」
私の奇行を紳士的に流し、心配そうにしてくれるクラウスさん。
素敵な人だなあ。未だに何を考えてるか分からんマフィアのナンバー2(推測)とは大違いである。
……動物のうなり声が聞こえた。
「スティーブン。どうしたのだ。落ち着きたまえ」
クラウスさんが、目線を下ろして声をかけた。
そこにオオカミがいた。
真っ黒なオオカミ。目元に思いっきり目立つ傷があった。
お気づきであろう。この『オオカミ』が私の恋人『スティーブン・A・スターフェイズ』である。
今日もまた簡単な掃除だけしてお小遣いでブラブラして、家でゴロゴロするという自堕落な生活にいそしんでたら、クラウスさんがやってきた。
執事さんと……デカいオオカミを連れて。
何か私に向かって、うなっているんですがっ!!
「どうしてこんなことになったんです?」
クラウスさんはすまなさそうに、
「戦闘中に私を庇って、獣化の光線を浴びてしまったのです」
本当に、何でもありの街だなあ。
「ご安心を。変化したのは外見だけで理性は保っております。
知性や人間性に何ら影響はありません。
病院の診断では投薬と安静により、数日から一週間で獣化が解けるとのことです」
「知性や人間性に影響はない……ねえ」
……やっぱり私に向かってうなってきてないか?