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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました



 そのときはお詫びのメモと一緒に、高そうな焼き菓子が一つ二つ。

 私はそれを食べながら、今日はどこを重点的に掃除しようか考える。
 

 そんな生活が……かれこれ二週間。


「限界です……」
 公園のベンチでうなだれ、私はぼやいた。

 やっぱり写真を撮っておけば良かった。会えなさすぎる。
 今回は手紙のやりとりをする時間さえないらしい。

 定時に安否確認のメッセージは届くけど、毎度事務的な内容で、マジでただの『安否確認』。
 電話もかけてもらえない。

「最近、案件が立て込んで死にかけてるからなあ。泊まり込みもせず、よくやってると思うぜ」
 
 私の横にどっかり座り、ザップさんが言う。

 何だかんだで、私はこの人と仲が良くなってきてた。
(あちらはタカり対象としか見てないだろうけど)
 時々レオナルドさんにも会って、相変わらず気にかけてもらってる。
 日曜に見かける大道芸の人は、ザップさんとレオナルドさんの後輩らしい。
 お二人に紹介してもらい、時々お話することもあった。

 ……だが私の人間関係はそれ以上に広がりを見せず。

「素人掃除だけして、朝ご飯用意してもらってお小遣いもらって、あとはブラブラして……これでいいのかなあと」

「だからおまえはヒモとして未熟だって言ってんだよ。向こうが勝手に養ってくんだから、いちいち悪いとか申し訳ないとか思ってんじゃねえよ」

 大あくびをし、葉巻をふかせながら、どこぞのクズがほざく。
 ヒモじゃないっつうに。

「何かしたいんなら夜は満足させる。出て行けと言われたら後腐れなくすっぱり出て行く。基本だろ」

 お、男らしいのか男らしくないのか分かんねえ!!

 しかしザップさんはフラれても平気そうだけど、私はどうだろう。
 そもそもスティーブンさんが忙しすぎて、夜、満足させるどころじゃない。
 もし『新しい女を住まわせるから、出て行ってもらえないか?』なんて言われたら……あかん。想像するだけで鬱になる。
 
「まあ深く考えんなよ。あれで番頭は情が深いとこあるし、捨てるときも多少の金はもたせてくれるって」
 私の背中をポンポン叩きながらザップさんが言う。

「いやチリほども慰めになってないし――ザップさん?」

 横を見、私は戸惑った。

 今の今まで普通に話してたザップさんが、うなだれ熟睡していた。

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