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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました




「誰かを抱きしめるとき、せめて君を思い浮かべていたい。
 形だけでも、そばにいてほしい。なんて弱い感情からだよ。失望させたかい?」

 いやさっぱり分からんし。
 てか、その理屈だと服を着てる写真でも構わない気がするんだけど。

 ……趣味か?

「ずるい……私だって、スティーブンさんの写真が欲しいのに……」
 うとうとしながら言うと、頭を撫でられた。ふにゃ。

「君はそんな弱い子じゃないだろう?」

 よく分からない。額にキスをされた。

「おやすみ、ハルカ」

 優しい声と共に、私は寝てしまった。

 …………

 …………

「うわ、寝過ぎた!!」
 目が覚めると、もう昼近くだった。
 慌ててリビングに行ったけど、スティーブンさんはとっくに出勤した後だった。

 テーブルの上に、サラダとサンドイッチの朝食が用意してある。
 あ。お皿の重しの下に今日のお小遣いがあった。
 お小遣いと一緒にメモもついてた。

『歩いていいのは公園と大通りだけ。スマホは持っていくこと』

 殴り書きのような文字だ。これは、自分も寝坊してギリギリで出かけていったな。
 きっちり朝食を用意してるとこが律儀だけど。

 今日からまた、外に出てもいいみたいだ。良かった。

「ん? そういえばこの前は何でまた、外に出ちゃいけなかったんだっけか?」

 そういえばあの日は昼からの記憶があいまいなんだよな。

「まあ、どうせ昼寝でもしてたんでしょう。家から出なかったんだし」
 あははと笑い、椅子を引いて、ハムとレタスのクロワッサンサンドを手に取る。

「……あれ?」

 ポタッと涙が落ちた。
「え? 何で?」

 首をかしげたけど、自分でも理由が分からなかった。

 …………

 それからしばらくは、何ごともなく日々が過ぎていった。

 朝起きてスティーブンさんの作った朝食を取って、お小遣いを頂戴して、家を掃除して、ストリートや公園をぶらぶらして、夕方近くに家に帰って。

 スティーブンさんはお仕事が多忙で外で食べるから、一人分の夕食を作る。
 広すぎるリビングでポツンと一人で食べて、シャワーを浴びてベッドで寝る。

 せめてお帰りを出迎えたいけど、スティーブンさんは大抵私が寝た後に帰ってくる。

 そして朝起きると、また朝食が用意されていてスティーブンさんは出かけているのだ。

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