第4章 開き直りました
「いえ、私は熱で汗かいてるし、熱下がっても風邪のウィルスが残ってるかもしれないし……」
普通にキスしたりハグされたりしてるけど、もしかして臭ってないかと思うとドキドキなのだ。
「あ……そうか。そうだね。すまない。変なことを言った」
「いえいえ」
スティーブンさんは心底から安堵した顔だった。
フ。滑った冗句を優しく流してさしあげた、私の温情に深く感謝するがよい。
「じゃ、身体を拭こうかハルカ」
「いだだだだだだっ!! ぐりぐりしないでっ!!」
こめかみへの制裁に悶絶しながら、私はいじめられたのであった。
…………
タオルをしぼる音がする。私はパジャマを脱ぎながら、
「熱が下がったんだから、お風呂入って良くないですか?」
「自分で『ウィルスが残ってるかも』と言った口で、何を言ってるんだ。
身体を冷やして、熱がぶり返したらどうするんだ。ほら、拭くぞ」
コツンと指の角で頭をつつかれる。
「へーい」
下着も脱ぎ、上半身裸になった。スティーブンさんは青シャツを腕まくりし、背中から拭いてくれている。
ああ、気持ちいい。
「そういえば、前にも同じことがありましたよね。ほら出会ったばかりの頃、一度、高熱を出して」
「…………。そうだね」
あのときは、スティーブンさんと恋仲になるとか考えてもみなかったなあ。
「ハルカ。腕を上げて――度肝を抜かれたよ。君に前側を拭くのを任せたら、不精して全裸になってるんだから」
あったな。双方にとっての黒歴史が……。
「それでスティーブンさんが私の艶めかしい姿に発情し、私に襲いかかり――」
よよよ、と目頭を押さえると、
「ハルカ~?」
「冗談っすっ!!」
殺意のこもった声で名前を呼ばれ、瞬時に白旗を揚げた。
スティーブンさんはきれいな水でタオルをしぼりなおすと、
「ほら、前を拭くからこっちを向いて」
「エッチ」
胸を押さえ、恥ずかしがってみるが、
「そうだよ。君を襲いたいから早く済ませたいんだ、ほら、とっととこっちを向く」
「く。直接的すぎる。もっとこう、遠回しにですね――」
「はいはい。分かった分かった、お姫様。じゃ、もっと直接的に行こうか?」
「え!?」
瞬間にキスをされ、ベッドに押し倒された。
最近、口封じにキスをされているような。