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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第4章 開き直りました



「そしておやすみなさい!」

 即寝しようとしたが。

「ハルカ?」
「いやああ!!」

 いだだだだ!! 冗談だから、ほっぺた引っ張らないで!

 スティーブンさん、ぱちんと手を離し――ああ、痛かったぁ!――私の額に手を当てる。

「熱は下がったみたいだね。良かった」
 マジっすか。あ、でもホントに体調が良くなってる。
 身体が軽い。

「良かった。心配したよ」
「あはは。スティーブンさんが氷とか、色々用意して下さったおかげです」

「役に立って良かったよ。ところで、残りの氷はどうしたんだい? 結構残ってただろう?」

 ギクッとした。氷はカケラも残さず全部溶けました。
 けどスティーブンさんは、私の沈黙を別の意味に取ったらしい。

「ハルカ……もしかして君、喉の渇きに耐えかね、あの氷を口にしたんじゃ……!」

 理屈は謎だが、あの氷の組成の一部は、スティーブンさんの体液だそうな。
 なので摂食されるのは、当人にとってドン引き事案らしい。

「いえいえいえいえ!!」
 信用に関わる問題なので、否定しておく。

「必要なくなったので、窓からぶん投げました!!」
 これは間違いではない。大量の水の処分に困り、実際に窓から投げ捨てたのだ。

「豪快なことをするなあ。そんなことをしなくても、僕が片付けてあげたのに」
 驚いたようにスティーブンさん。
 幸い、氷の行方を確認する気まではないようで、ホッとした。

 ……『こいつならやりかねん』という顔をしてるのが、若干、附(ふ)に落ちないが。

「それよりハルカ。治って本当に良かった。心配だったよ」

 私を抱きしめ、もう一度キスしようとしてくるので慌てて、

「……すみません。近寄らないでもらえませんか?」

『NO!』と拒絶の態度を示した。

「……え。なんで……」

 あ。思った以上にショックを受けてる。
 かと思うと、顔に恐怖をたたえ、つかみかからんばかりの勢いで、

「ハルカ! 君、もしかして思い出したのか!?
 あれは違うんだ! あの女を放置していたら、いずれ万単位の犠牲者が――」

「は? あの女? 犠牲者? 映画の見過ぎですか? スティーブンさん」

 私はポカンとする。

 話術は上手いのに、たまに謎のジョークを振ってくる人だなあ。
 
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