第4章 開き直りました
「僕は君がここにいてくれれば、それでいいんだ……それだけで良かったのに……」
さながら何かを懺悔(ざんげ)するように呟き、私に布団をかけ直す。
そして私にまたキスをし、
「すぐに帰ってくるから」
「いって、らっしゃい……スティーブンさん」
……風邪か何かなら移るからキスは止めた方がいいのではとか、臨終間際か私はとか、ツッコミ入れたくなるのだが、スティーブンさんが真剣そのものなのであまりイジれない。
「それじゃ、いってくるよ」
スティーブンさんはビシッとスーツを着、扉を開ける。
「苦しくなったら電話しますから、大丈夫です。お仕事がんばって下さい」
「君は我慢しすぎる子だから不安だよ……本当に無理をしないでくれよ」
「はい、ありがとうございます」
微笑んで手を振る。そして扉が閉まった。
私はハーっと、緊張を解いて――。
ガチャっ。扉が開いた。スティーブンさんが顔をのぞかせ、
「電話がつながらないときはメッセージでもいい。必ず読むから」
「あ、はい。ども……」
「いってくるよ」
「……いってらっしゃい」
そして扉が閉まった。
私は枕元の水を取ろうと――。
ガチャッ。
「あとで電話するから」
はよ行けっ!!
…………
…………
スマホの振動音で目が覚めた。
私は半分寝ぼけながら電話を取り、
「はい、ハルカ――」
「ハルカ! ハルカ。大丈夫かい? 一度も連絡はなかったけど、熱は!?」
まくし立てられたので、ほわほわした頭で、
「ご指名ありがとうございます。ハルカです。好きな体位は対面座位、下着ははいてません」
「………………」
や、ヤバい。軽く和まそうとしたのに、猛烈な冷気がスマホの向こうからっ!!
「すみませんごめんなさい冗談です、つまり冗談を言えるほど元気になりましたという、健気なアピールです」
自分で自分の冗句を解説するという屈辱!
いや、でもかなり熱いな。下がってきたとはいえ、まだ38℃はありそう。
しかし時計を見ると、まだ一時間くらいしか経ってない。
してスマホからは冷たい声が、
「そういう微妙な冗談は止めてくれ。好きな体位の件については考慮する」
マジか。