第4章 開き直りました
歯磨きから戻ってくると、ものすごく眠くてたまらなくなってた。
スティーブンさんも読んでた文庫本を閉じる。
「ハルカ。そろそろ寝ようか」
「はい」
ゴソゴソとベッドに戻り、スティーブンさんに寄り添う。
すぐにたくましい腕が抱き寄せてくれた。
……昼間のことを聞きたい。聞いていいのだろうか。
でも約束を平気で破る、面倒くさい女だと思われたくない。
かといって浮気OKな都合の良い女扱いされるのも嫌だ。
聞きたいけど聞けない。
言うことを聞いていれば、スティーブンさんは優しいのだ。
でもモヤモヤは収まりきらず、私は悩む。
幸いにも眠気は迅速に私を、夢の国に引きずりこもうとしてくれた。
「おやすみ、ハルカ。君は何も見なくていい。知る必要もない」
唇にキスをされた。でも私は眠くて眠くて、ろくに反応をしない。
「何も見ず、聞かず、考えず。僕のそばにいてくれれば、それだけで――」
私は眠ってしまい、その続きは聞けなかった。
…………
…………
「ん……」
暗闇の中で目が覚めた。
最初はそのまま寝直そうとし、それから違和感に気づく。
スティーブンさんがいない。
ベッドサイドの時計を見る。液晶に表示されてる時刻は午前三時。
「スティーブンさん?」
ベッドを這い回り、残り香を探した。でも無い。
頭の中に重い眠気が居座っていたけど、私はゆっくり起き上がった。
「…………」
少し起きただけで、ズンと眠気が襲いかかってくる。
重い。眠い。頭がふわふわする。
異常なほどの眠気だった。今すぐぶっ倒れて朝まで、いや昼まで寝てしまいたい。
でも心配だ。
「私、夢の中で夢を見てるのかな……」
きっとそうだ。スティーブンさんが私を残してベッドを出るわけがない。
昼間の不安が夢になってしまったんだな。
ほら、その証拠に視界もぐるぐるしている。
「スティーブンさん……」
私はスリッパを履き、大好きな人の姿を探して、ふわふわ歩き出した。
…………
やっぱり夢らしい。
スティーブンさんが見つからない。
私は階段を上がって下りて、ふらふらと歩く。
そのうちに、自分がどこにいるのか分からなくなる。
やがて廊下の明かりもなくなる。
闇だけが深くなり、寒気が漂ってきた。