第4章 開き直りました
「チョコうまー!!」
相変わらず語彙力がございません。
でもスーパーで売ってる大量生産品と明らかに『格』が違うのはよく分かった。
「こんなの食べたら、もう普通のチョコは食べられませんな」
舌でゆっくり溶かし、至福の思いを味わう。
「機嫌が直ったかい?」
「私の機嫌を直したくばチョコをもう一つよこせください」
「ほう。チョコの代わりにもっと長くて太いものを入れてあげようか?」
「いやそれ、クソくだらないオッサンの下ネタ――いだだだだだだっ!! すみませんでしたぁ!!」
容赦のないDVを受け、早々に屈したのだった……。
「よろしい。けど次は本当に口にブチ込むからな?」
「はい~」
生意気なことを言うのは止め、口を開けチョコを恵んでいただいたのであった。
「スティーブンさんはいただかないので?」
彼は最初の一個を食べた後は、私にずっと食べさせてる。
「ん? 物を一心不乱に食べてる君が可愛いからね」
太らせる気かっ!! 小動物の餌付けかっ!!
「大丈夫大丈夫。君の歳なら、もっと食べた方が良いのは事実だし、例え増えても僕が運動させてあげるから」
「下ネタ!!」
そう言うと、ニヤッと笑われる。
「何を想像したんだい? ハルカ。スポーツに決まってるだろう?
ランニングマシンがあるから、ヒマなとき使っていいよ?」
「いや『ランニングマシン』とかサラッと!! あと私、そこまでストイックじゃないしっ!!」
なーんて、気がつくと笑ってしまっている。
モテる大人ってずるいなあ。
もっとドロドロする場面だろうに、スティーブンさんは空気にひたらせてくれない。
自分がそうしたい方向に、私を引きずってく。
でもスティーブンさんが空気を変えたせいで、モヤモヤは引っ込みつつあった。
そしてチョコレートを食べ終えると、スティーブンさんは箱を片付け、私にボトルをくれた。
ごくごくと喉を鳴らして飲むと、そっと抱きしめられた。
とても愛おしげに。
「やっぱり、君といるのは楽しいよ」
頬を寄せながら、スティーブンさんがささやく。
「何を気取る必要もないし、肩の力を抜いていられる」
……私としては、もう少し肩の力を入れていただきたいんすけど。