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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



 スティーブンさんのスマホが鳴った。

「おっと。待たせすぎたな」
 スマホを取るスティーブンさん。

「悪い悪い。もうすぐ出るから。え? それは心配いらない。うん、すぐに出る。十分後に合流しよう」
 スマホを切って私に、
「ハルカ。すまないが、仕事に行かなければいけない。悪いが休んでいてくれ」

 そうして急ぎ足で、どこかに消える。

 私はソファで呆気にとられてた。五徹で一晩休んで、またすぐ仕事!?
 ブラックというレベルじゃないぞ。ロードーキジュンホー違反というやつだ!
 ……いやヘルサレムズ・ロットに、ンなもん無いか。

 やがてジャケット片手に戻ってきたスティーブンさんは、
「ダイニングのテーブルに昼食を置いておいた。
 触っちゃいけないものもあるから、掃除とかはまだしなくていいからね」
「はい」
「それと、キッチンには近づかないでほしい。
 あと会社の重要書類もあるから、僕の書斎もダメだ。気を悪くしないでほしい」
「心得てございます」

 家主の許可なしに、勝手におうち探検をする気はない。
 それに私は冷蔵庫だろうと冷凍庫だろうと関係なしに周囲を春の気温にしてしまう。
 食中毒量産機になりたくはない。

「この部屋を使ってくれ」
 そしてスティーブンさんに客室を案内してもらう。
 広いし、一通りの調度品がそろっていた。
 日当たりが良く、窓からはヘルサレムズ・ロットの景色がよく見えた。
「足りないものは後で買いに行こう。とりあえず今日はこれで我慢して」

 いや我慢も何も、高級ホテルかって部屋だ。
 ホントに何の仕事してんだ、スティーブンさん。育ちも良さそうに見えるしなあ。

「どうしても出たいなら外に出るのは自由だよ。けどオートロックで、幻術含めた各種セキュリティもあるから、一度出たら二度と戻れないと思いなさい」
 しれっと怖いこと言われた!


 そしてリビングに戻り、スティーブンさんはネクタイをしめ、青シャツの上にジャケットを羽織る。
 一つ一つの動作がサマになってるなあ。

「それじゃあ、夜には戻るよ。今日の日付のうちには帰ってこられると思う」
「ちょっと休んで、またそんなに働くんですか? ひどい上司さんですね」

 電話での口調は、とても良い人そうだったのに。

「そんなことはないよ」
 スティーブンさんは柔らかに微笑んだ。

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