第3章 開き直られました
「んん~」
何だかよく分からない。お風呂が気持ちいい。温かい。
「ハルカ。大丈夫かい?」
「ふい~」
謎の返答をし、スティーブンさんの肩にもたれる。
久しぶりのちゃんとした熱いお湯の快感。脳みそが溶けかけるのも、やむなしであろう。
「普段と違う君もいいな」
そのまま、スティーブンさんと抱きしめ合ったり、キスをしたりしてたけど。
「……そろそろ出ようか」
名残惜しそうにスティーブンさんが言う。
「ええー」
不満をもらすと、
「これ以上入っていると湯あたりしてしまうし、僕も無理やり君を襲ってしまいそうだからね」
「はいー」
……今、さらっととんでもないことを言わなかったか、この人。
「あと三十秒~」
「分かった。じゃ、先に上がっているから君は満足したら出てきてくれ」
「はーい」
私はザバッと音を立てて、スティーブンさんの裸体が湯から出るのを見た。
うわ、ずいぶんお湯が少なくなった。足さないと。
蛇口をひねり、いそいそと湯を足していると、
「ハルカ。本当に早く出るんだぞ?」
「ご心配には及びません。私の判断力を信じて下さい!」
「…………。五分後に様子を見に来るから」
傷ついた! 今、ものすごく傷ついた!
…………
五分後。
スティーブンさんが様子を見に来たけど、私はまだまだ湯にご満悦でつかっていた。
「あと十分経ったら迎えに来て下さい――うおわっ!!」
バスタブからザバァッと、無理やり引き上げられた。
…………
私はふっかふかのキングサイズのベッドでダウンしていた。
バスローブ姿のスティーブンさんが水を持って来て、
「ハルカ。水をもう一杯飲むかい?」
「あ。どもです……」
渡された氷水をごくごくと飲んだ。
いやあ。長湯で見事にのぼせてしまった。情けなや。
私はぼーっと、気泡の無い氷を見、
「この氷、スティーブンさんの氷ですか?」
「期待の目で言うんじゃ無い。そんなワケがないだろう?」
「マジすか」
ガッカリすると、額を指でつつかれた。
「あの氷は僕の身体の成分が元になっているんだ。人に飲ませられるわけがないだろう?」
「……身体の成分。マジすか」
私はバスローブに包まれたスティーブンさんの下半身をジッと眺める。
「いやちょっと待て、ハルカ」