第3章 開き直られました
前略。
まだヤッてません。脱衣ルームんとこで恥ずかしがってます。
いや順序逆だろう。すでに一線越えしたのに何をどう恥ずかしがると!!
自分で自分にツッコミを入れてみても、恥ずかしいことには変わりない。
敵はすでに下着を残すのみである。身体をおおうタトゥーがよく見える。
「どうしたんだ、ハルカ。それとも僕を誘っているとか?」
ニヤニヤニヤ。
「いいいえいえいえ!!」
く、くそ。これ以上待たせたら、やっぱり子供だと呆れられちゃう。
ここは大人の女っぽくスマートに! そう、焦らす感じで!!
「ハルカ。手ぇ震えてるよ」
……焦らすどころじゃないし。
いやホント、何で緊張するんだ。繰り返すが、すでに一線越えた後なんだぞ?
早くしないとスティーブンさん寒くなっちゃう!
「ち、違います!! これは! 何かこう! あれがどれで!!
とにかく凍死しないで下さい、スティーブンさん!!」
「うんうん。君が謎の理由で混乱に陥るのはいつものことだから、気にしていないよ。
それと、別に雪山で温泉に入ろうって言うんじゃ無いから。ここはホテルだからね。待つよ」
ナチュラルに侮辱されている気がしないでもないが、シャツのボタンを外す手が震えるのは確かだ。
ええい、生娘か、情けないっ!!
すると敵が笑いながら近づいてきて、
「ハルカ。手を下ろして。僕がやってあげる」
「わっ!!」
スティーブンさんが後ろから服のボタンに手をかけてきた。
「そんな馬鹿な! 気配は無かったのに!!」
「どんな状況だよ。君がテンパりすぎて、周りをよく見ていなかっただけだろう?」
「傷ついた! 私のアイスのように柔らかな心が傷つきました」
「すぐに溶けそうだね、それ。あ、冷蔵庫にサービスのアイスが入ってたかな」
私のボタンを外しながら言う。
「やった! 風呂上がりにいただきます!」
「ダメだよ。君は僕の相手をしてくれないと」
「!!」
服の上から軽く胸に触られ、硬直した。
「ちょ……スティーブンさ……冗談です! 食べるのは一回戦後で!!」
思わずノリで応えると、
「あのさ、ハルカ……さっきから、僕を焦らして楽しいのかい?」
「は?……え!!」
スティーブンさんは、いつの間にか脱がせる手を止め、私を抱きしめている。