第3章 開き直られました
ザップさんはフッと笑う。
「いいか。相手を長くつなぎ止めたいのなら……身体だ!
どんな理由でケンカしようが、身体でなだめりゃ、大抵のことはどうにかなる!」
「…………」
実体験に基づくだろうと思われる、力強いお言葉であった。
私はザップさんの強引さにグイグイ引きずられ、セクシー下着を何点か持って、レジに品物を持っていく羽目に。
そして安くない金額を支払い、会計が終わった。
「あ、これは受講代にもらっとくぜ」
「な……!」
パシッと袋から包装を一個取られた。まあ、それ、一番恥ずかしい下着だったからいいか。
あと何の講座だ。ヒモ講座か。ヒモ講座なのか!?
ん? 女の場合、ヒモじゃないよね。何て言うんだろ。
とか余計なこと考えながら金を財布に戻そうとすると、
「でもま、おまえの方は、そこまで番頭に夢中じゃねえのな」
「そ、そうですか?」
他人に言われ、ドキッとする。
私は私でスティーブンさんのことが好きなつもりなんだけど。
「あの晩だって、スターフェイズさん、笑えるくらい必死だったしな」
あの晩って、レオナルドさんの家から連れ戻されたときのことか。
面白そうにザップさんが、私の顔をのぞきこんでくる。
「気をつけろよ。ああ見えてスターフェイズさんも理不尽だからな。
落ちないと見れば、全力で落としにくるぜ」
「……え」
「それとこれ、借りるな!」
「あ!!」
財布に戻そうとした残りのゼーロ札、全部取られた!
「ちょっと、ザップさ――!」
「今度会ったとき返す! 必ず返すから! じゃ、またなー!」
目にも止まらぬ速さで、褐色のチンピラは店を出て姿を消していた。
「……クズがっ!!」
小銭だけになった財布を見て、悪態をついた。
「……帰ろ」
馬鹿なことをやっていたら、もう夕方だった。
私はセクシーランジェリー店のロゴがばっちり入った買い物袋片手に、とぼとぼと大通りを歩く。
「ん?」
そのとき、私の真横に高級車が止まった。
もしや誘拐!?と、警戒して距離を取ろうとしたら、運転席の窓が開いた。
「ハルカ」
「あ」
スティーブンさんだ。同時に助手席のドアが開く。
「乗って」
ご機嫌である。断る理由もなく、私はいそいそと助手席に乗り、シートベルトをした。