第3章 開き直られました
昼下がりの公園で、銀髪のチンピラに絡まれております。
「だから、その、いただいてないですから……」
「嘘つけ。おまえ、スターフェイズさんに仕事辞めさせられたんだろ?
ならあの人のことだから、埋め合わせの小遣いくらいは渡してるはずだ」
……鋭い。
私の顔色から、カマかけが成功したのに気づいたのか、兄ちゃんはニヤニヤと私の肩に肘を置き、
「なー、いいだろ? 後で返すからさあ」
重い! 体重かけてくんな!!
あと絶対に返さない顔だ、これ!
愛想に定評のあるハルカさんも、だんだんと笑顔に亀裂が入ってくる。
「もういい加減にして下さい!」
「金落としたって言えばいいんだって。ちょっと笑えばすぐ小遣いくれるって」
「いや甘くないですよ。スティーブンさん、色々と管理が厳しいし」
「えー! 束縛ー!? 愛されてんねー!」
「ちょ……! 大声でいわんで下さい。そんなじゃないし!!」
だが私が一向に財布の紐をゆるめないせいか、敵も搦(から)め手を使ってきた。
「よし分かった。なら金と引き換えに、この俺が、イロに上手く貢がせるコツを教えてやろう!」
「……どういうコツですか。だいたいそんなこと言うってことは、ザップさん、まさか女性に貢がせてるんですか?」
納得はいく。
ザップさん、黙ってりゃイケメンだしなあ。
細身な割に、チラッと見える筋肉は鍛えられてる感じだし。ホストとかやったら、ものすごい客がつきそう。
まあ、スティーブンさんの方がカッコいいけどー。
「これも世渡りのテクニック。処世術だ」
キラッと爽やかな顔で言うな。
「つまりヒモってことでしょうが。サイテー! 昼間っから仕事もせず、人の稼いだ金でぶらぶらするなんて!」
するとザップさん、真顔になり。
「それ、おまえが言うわけ?」
「…………」
返す言葉がございませんでした。
…………
…………
ランジェリーショップで、私は目を白黒させてる。
ザップさんは陳列棚をチラ見し、
「これも買っとけ。これもだな」
私に次々に商品を持たせる。
「あ、あの……」
渡されたロリっぽいデザインのベビードールだの、レースだらけで生地が恐ろしく少ない赤いセクシーショーツだの。
てか何で私、恋人でもない男の人と、下着を買いに来てんだろう……。