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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



 とりあえずは情報収集だ。
 街に出よう!

 私は決意を固め、テーブルにのってたゼーロ札を取った。
「ん?」
 お札に隠れるように、下にメモ書きがあるのに気づいた。

『呪いを解く方法については、僕が情報収集する。
 危険なことには絶対に首を突っ込まないように』

「…………」

 敵の方が、一枚うわ手だった。

 …………

「うーん……」

 掃除を終わらせ、スティーブンさんの富裕層向けアパートメントを出た。
 でも特にやることもなく、公園のベンチでボーッとしている。
 い、いかん。これではオッサンと同じでは無いか。

「でもやることがないし」

 何もしなくて良いって言われてるけど、ヒマだ。

「せめてあの先輩と、番号を交換しとけば良かった」
 さすがヘルサレムズ・ロットというか、二日だけ働いた店の先輩に、呪術師がいた。

 彼女は私の呪いを解くのが、超困難になってるということは教えてくれた。もう少し仲良くなってたら、もっと色々教えてくれたかもしれない。

「店に行ってみる? いやでも私の居場所、スティーブンさんに筒抜けだしなあ」

 恐るべし、GPS。
 ちなみにスティーブンさんからは、安否確認のメッセージが一度入っただけ。
 やはりお忙しいのだろう。

 そしてボーッと、無駄に時間を過ごす。
 
 昼下がりの公園には、色んな人が歩いてた。
 人間、異界人、家族連れ、サラリーマン、ガラの悪そうな銀髪のチンピラ――。
「ん?」

 あの褐色肌のお兄さん、どこかで見たような。

「ん?」
 私の視線に気づいたお兄さんがこちらを向き――目が合った。

 あ。思い出した。
 あの人、レオナルドさんの先輩さんだ。

 私は立ち上がり、背を向け、そそくさと公園の出口に歩き出した。

「ちょーっと待った!!」

 逃げようとしたが、肩をつかまれた。

「ああああああの、なななな何のご用でしょうか?」
「おまえ、この前会った番頭の愛人だよな!?」

 あ、愛人……。

 他人にそう言われると、内心複雑な気分である。

「ザップさん、でしたよね。何か?」

 私の勘が告げている。いや勘で無くとも分かる。
 この男、ろくなもんじゃない。

「なら番頭から、たっぷり小遣いもらってるだろ? ちょーっと貸してくんねえ?」

 ……『たっぷり』はもらってません。

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