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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



 難しいことは考えないようにして、それきり眠ってしまう――はずだった。

「うーん……」
 浅い眠りから覚めた。

 薄目を開けると、スティーブンさんが起きていた。
 何やらベッドに座り、腕組みをされている。
 でも外はまだ暗い。夜明けにも早い時間みたいだ。

「ハルカ。起きたのかい?」

 私の視線に気づくと、ポンポンと優しく頭を撫でて下さる。ごろごろ。

「もう少し寝ていていいよ。まだ早い」
「はい……」

 私は半分寝ぼけ、スティーブンさんの膝の上に頭をのっける。
 さっきの膝枕の仕返しだ。

「!」

 スティーブンさんはちょっと固まり、でもすぐに私の頭を撫でる。
 私も安心して目を閉じるが――か、固い!!
 全く、ぜい肉がない! これなら腕枕の方がまだマシだ。

「こらこら」
 ふかふかの枕に頭を移そうとすると、妨害されスティーブンさんの膝に戻された。

「君の枕はこっちだろう?」
「固すぎです……全てを包み込むやわらかさに欠けますです」
 むー、と不満を述べ立てると、

「仕方ないさ。君の腹じゃないんだから」

 せめて『胸』と言えないのか、そこっ!!

 しかし眠いので、せめてもの仕返しに、ぺちぺちと固い腿を叩いてやる。
「くすぐったいよ。ハルカ。僕は仕事柄、足は鍛えないといけないからね」
 私の髪を弄りながら笑うスティーブンさん。どういう仕事だ、マジで。

「ごめんね」
「?」
 ふいに謝られ、少し目が覚める。

「君を信用してないとか、そういうわけじゃないんだ。
 ただ……君を危険に晒したくない。信じて欲しい……なんて都合が良すぎるかな?」
 
 …………。

「信じますよ。スティーブンさんの言葉なら」

 足にゴロゴロと頭をこすりつけ、まっすぐ目を見つめる。

「ありがとう。君はいい子だね、ハルカ」
 猫を撫でるように私の頭を撫でる。
 もう少し色っぽい言葉が欲しいなあ。

「でもスティーブンさん、寝ないんですか? それとも朝が早いとか?」

「年寄り扱いするんじゃない。フッと目が覚めただけだよ」
 そういえば、睡眠が不規則だったっけか、この人。

「それでお仕事の考え事とかされてたんですか?
 本当に真面目なんですね、スティーブンさん」

「いや違う、君を襲おうかどうしようかと思って」

 ……おい。
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