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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



「この×××××!!」「そちらこそ××××では!?」
 最終的に怒号が飛び交っていた。五徹の後、一晩寝ただけだから、ケンカっ早くもなるわな。

 ん? スティーブンさんの別のスマホが鳴ってる。
 怒鳴りまくっていて気づかないなあ。
 仕方ないので取り次ぎだけでもするかと、取ってみた。

「はい」
『誰だね、君は。スティーブンがそばにいるのなら、代わってくれたまえ』
 穏やかな声が聞こえた。
「スティーブンさんでしたら、今、警察と怒鳴り合ってる最中ですので、少々お待ち下さい」
『警察?』
「迷子の私をどっかの救済機関に預けたいんですが、受け入れ先がなくって」
『ふむ。詳細は分からないが気の毒なことだ。私に出来ることがあれば――』

「おい、君! 何勝手に電話を取っているんだ!!」
 スマホを思い切り奪われた。

「違うんだクラウス! 今のは――は? いや、そういうことじゃ! いい! いいよ! 君が心配するようなことは、何もないからっ!!」

 しばらく言い訳に終始していた。
 私はスティーブンさんの珈琲の飲み残しを飲み、一仕事終えた気分であった。

 …………

「電話がかかってきたら、言ってくれていいから……」
 ものすごく疲れた顔で電話を切るスティーブンさん。
「とにかく次を考えよう」
「あの、本当にありがとうございました。もう大丈夫ですから」
「?」
「しばらく生きていけるよう、仕事を探してみます。あとは自分で何とかしますから」
 頭を深々と下げた。正直、先行きは厳しいけど、これ以上迷惑はかけられない。
「ここまで親切にして下さって本当にありがとうございました。このご恩は一生、忘れません。では――」

「待ってくれ!!」

 背を向けたら手首をつかまれた。

「え?」

 スティーブンさんの表情をまじまじと見る。

「いや、その……」
 なぜか顔を赤くされ、次の言葉に困っているご様子だった。
 
「その……さっき、電話してきた奴に、言われた、から……。
 何て言うか、困ってる子が、いたら……助けてやれ、と……だから……」

「あの、ごめんなさい。よく聞こえないのですが」

 大人の男性なのに、キョドってるし目を合わせないし顔が赤いし、どうしたんだろう。思い当たる原因は――。

 ……も、もしや、これが噂に聞く更年期障害!?


「ここに住まないか!?」


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