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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



「どうだろう。オススメはしないね」
「ちょっと周囲が温かくなるくらい、いいじゃないですか。
 こうなったら、私一人で外に――」

「君が今後アイス売り場や冷凍食品のケースの側を通ったら、それだけで全廃棄になるんだぜ?」
「うっ!」

「君のまわりだけ冬は暖かく、逆に夏は涼しい。おかしいじゃないか。皆は遠巻きにする。君を迫害する」
「うう!」

「厳重に温度管理された工場内部に入れば、それだけで爆発や有毒ガス大量発生の惨事が起こりうる。ドライアイスの保管庫に入ったら一発で窒息。下水近くやゴミ処理場近くを歩こうものなら、水に溶けた猛毒の硫化水素が君のせいで気化するかもしれない。除草剤に使われるクロロメタンは気化により中枢神経を――」
「止めます! そんな馬鹿なこと、もう考えませんから!!」

 延々続けようとするスティーブンさんに怒鳴り、涙目だった。

「といっても、一ヶ月、君の身体が無事だったから、そこまでガチガチの呪いじゃないんだろうね」
 
「ちょっ、さんざん脅しといて!?」
 スティーブンさんは悪びれずに笑った。
「だって今まで生体には影響がないんだぜ? でなければ、君の周囲には低体温症による死人が大量に出たはずだ」
「……っ!」
 なるほど。安い術士に頼んだから、そんなフワッとした呪いになったようだ。

「じゃ、どうすればいいんですか?」
 さすがに、これ以上スティーブンさんに面倒を見て、と言えるほど図々しくはない。
 スティーブンさんはスマホを取り出した。

「とりあえず僕のコネを当たってみる。どこかの避難シェルターに空きが無いか聞いてみよう」
「ありがとうございます!!」
 私は拝みたい気分で、スマホを出すスティーブンさんを見た。

「ハロー、警部殿ですか? 僕ですが実は――」

 ブツッ。スマホは沈黙。

「ガチャ切り……」
「ゴホンっ」
 スティーブンさんは咳払いし、すぐ次の番号をかける。

「救済センターですか?」「観光客の少女で、面倒な呪術にかかっており特例救済措置の利用を申請したく――」

 私がソファの上であくびをしている間に、スティーブンさんは電話をかけまくり、

「出来ないから、力をお借りしたいと言っているのですが」「それはそちらの仕事では?」「失礼ですが、同じ事をあなたのご息女にも言えますか?」

 だんだんと言葉にトゲが出てきた。

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