第3章 開き直られました
何だかムズがゆくて、頬が熱くなる。
「そうそう。照れ屋で恥ずかしがりなとこ」
指でアゴをつつくな!
「だからもう良いって!!――ひっ!!」
胸にかるーくタッチされ、フリーズする。
犯罪者は、腕組みしながら笑っていた。
「それと、実はエッチなとこ?」
いやいやいやいや!
時計を見ると、もうかなり遅い時間だった。
「もういいですって。頭を床に叩き落としますよ?」
「それは困るな。せっかく僕の枕なのに」
「私は私の物っす」
「いいや、僕の物だね」
こらー。しがみつくなー。
「寝ましょう。スティーブンさん。実はすごく眠いんでしょう?」
「…………」
私の呪いなんて効かねー!みたいに仰ってるが、ものすごーく疲れてるときは、多少かかってしまうものらしい。
私の周りはいつでもポカポカ春の陽気。すっごく眠くなるはずだ。
「眠いからだよ……もっと君と、いたい」
ボソッと言われた。
……突然、そう来るとか。
そして思い至る。
「好きですよ、スティーブンさん。私の前で子供っぽくなってくれるとことか」
スティーブンさんが外で、どんなお顔で仕事をされてるか知らない。
でも女の子に膝枕をさせ、ワガママを言うスティーブンさんは多分レア中のレアなはずだ。
「ハルカ。男としてそういう褒め方は、嬉しくないな」
難色を示された! まあそうだろうな。
でもこんな強い人が、甘えてくれるってすごく嬉しいことなんだけどな。
けど、スティーブンさんは渋々起き上がった。
私の手を引いて立たせ、腰を抱いて私の部屋に行く。
「今日も一緒に寝よう、ハルカ」
「いいですけど、ちゃんと起きられるんですか? 私の呪いが効いちゃったら起きれないかも」
「アラームをかけるよ。君が先に起きてベッドから離れてくれれば、僕も起きられる」
面倒くさすぎる起床方法である。
そのとき、あることを決意した。
「しばらくは、呪いをどうにかする方法を探してみます」
この街ヘルサレムズ・ロットは、神秘怪奇超常現象の集積地だ。
「どこかに道はあるはずです。絶対にあきらめません」
スティーブンさんの腕にすがりながら言うと、
「好きだよ」
「は?」
見ると彼が私を見下ろし、笑っていた。
「君のその強さが――好きだ。とても、ね」